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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 映画との対話 深めたい

 映画の取材はいつも緊張する。原作を読んだり、監督の過去の作品を見たり。創作者の秘めた思いに少しでも近づきたくて、乏しい感受性を振り絞る。「記事をきっかけに映画を見た」という声が何よりの励みだ。

 「夜明けのすべて」でベルリン国際映画祭に参加する三宅唱監督は「さまざまな国のさまざまな観客と出会うことから、映画は始まる」と語る。「正しい映画の見方」はない。観客の数だけ映画は存在する。自由な対話こそ平和の証しなのだろう。

 今、評伝「オッペンハイマー」を読んでいる。昨年全米で公開され、米アカデミー賞13部門にノミネートされているクリストファー・ノーラン監督の新作の原案だ。3月29日、日本でもようやく劇場公開される。新たな観客との出会いから、豊かな対話が生まれることを願っている。(文化担当・渡辺敬子)

(2024年2月8日朝刊掲載)

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