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放影研に女性副理事長 「地域社会とともに」 プリーサ・ラジャラマン氏

被爆者の健康・福祉をサポート 私たちの使命

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)の第18代副理事長に、米国人でがん疫学などが専門のプリーサ・ラジャラマン氏が就任した。原爆傷害調査委員会(ABCC)の改組で放影研が1975年に発足して以来、初の女性副理事長。「被爆者や地域社会との関係を重視したい」と語る。(小林可奈)

  ―放影研の副理事長に就こうと決めたのはなぜですか。
 放影研は傑出した研究機関として世界で知られている。(南区の比治山公園から広島大霞キャンパスへの)移転などを控えた時期にこの職を担う機会は、特別に思えた。

  ―女性は初めてです。
 先輩の女性科学者の活躍を励みにしてきた。私も若手に同様の影響を与えることができたらうれしい。だが女性が直面する障壁はまだ多い。以前勤めた米国の研究所も、上層部ほど女性の割合は下がった。放影研では女性も指導力を発揮できる環境づくりを進めたい。

  ―ABCCは「調査すれども治療せず」と批判されました。この歴史にどう向き合いますか。
 重要な問いだ。原爆資料館(中区)を繰り返し見学し、被爆者と面会するなどして被爆地と放影研がたどった歴史を学んだ。被爆者への対応に敬意を欠いた時代のことを知り、悲痛な思いを抱いている。被爆者の健康と福祉をサポートすることは私たちの使命。研究への貢献に深く感謝することは非常に大切だ。

  ―被爆2世のゲノム(全遺伝情報)解析などにも取り組むことになります。どのような組織にしたいですか。
 他の機関と連携しながら、卓越した研究機関であり続けたい。被爆者とその子どもたちが抱える疑問に答えるためにも、遺伝的影響の研究は重要だ。来年は放影研発足から50年。移転により、地域社会とは物理的にもより近くなる。さらに関わっていく機会にしたい。

 ジョンズ・ホプキンス大ブルームバーグ公衆衛生大学院で博士号取得。米国立がん研究所の研究員などを経て、2023年6月から現職。

(2024年2月12日朝刊掲載)

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