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戦後憲法体制と教育勅語を比較 広島平和研の河上教授講演 個人と国の関係 人権の観点で

 広島市立大広島平和研究所の研究フォーラムが同大サテライトキャンパス(広島市中区)であり、河上暁弘教授(憲法学)が戦前の教育勅語と戦後の憲法・教育基本法をテーマに講演した。双方を比較しながら、日本の教育理念における個人と国家の関係を「人権」の観点から解説した。

 河上教授は、教育勅語は「明治天皇の『お言葉』を神聖化した超法規的存在」と説明した。「夫婦相和シ」や「博愛」などを記すが「全ては『存亡の機には命を懸けて天皇に忠誠を尽くす』ため」。人間の上下関係が前提で、疑問を持たず国家に尽くす臣民を育成する根拠になったと指摘した。

 教育勅語については「良いことも書かれている」との意見もある。河上教授は「先人の経験を聞き人格の向上をはかる」と記した暴力団の綱領などを例示し、文面だけでの評価に疑問を呈した。作家住井すゑの「教科書に教育勅語と(日本初の民衆による人権宣言ともいわれる)『水平社宣言』を並べたらどちらが人間的かが分かる」との発言も引用した。

 戦後、衆院は「排除」、参院は「失効確認」を決議。子どもは軍国主義下の「国家のための臣民」から、民主主義下で個性を伸ばす教育への権利を持つ主権者となった。だが河上教授は、国家の教育への介入、管理教育や不登校などの課題を踏まえ「憲法と教育基本法の本来の理念は未完」と語った。

 教育勅語を巡っては、広島市の松井一実市長が職員研修資料で一部を引用しており、被爆者団体や市民団体が反発している。(金崎由美)

(2024年2月19日朝刊掲載)

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