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「ヒロシマ、顔」 一冊の本に 広島のNPO 聞き取りプロジェクト 被爆者6人 それぞれの足跡

 広島市中区のNPO法人ANT―Hiroshima(渡部朋子理事長)が作成を続けている写真冊子が一冊の本になった。タイトルは「ヒロシマ、顔 ヒロシマを生き抜いた6人」。原爆による苦しみを生き抜き、平和な社会を求めて活動してきた被爆者6人の多様な歩みを、写真と言葉で伝えている。

 ANTは2020年から、被爆者や支援に尽くす医師たちを取材し、1人ずつ冊子とホームページで紹介するプロジェクトを続ける。すでに7冊を発行しており、さらに数人の聞き取りや撮影も進めている。

 今回の本にまとめたのは、21年に急逝した被爆証言者の岡田恵美子さん▽絵で体験を伝える西岡誠吾さん▽原爆詩の朗読活動を続ける清水恵子さん▽七宝作家でもある田中稔子さん▽被爆教師として平和教育に情熱を注いできた森下弘さん▽被爆者救済に尽くした故谷本清牧師の長女の近藤紘子さん―の6人。家族や親友、青春時代、草の根活動など、被爆体験にとどまらないそれぞれの人生のトピックも紹介している。

 その人の来し方や人柄までも映し出すようなポートレートは、西区の写真家石河真理さんが撮った。文はANTのメンバーたちが聞き取り、題字は書家でもある森下さんが筆を振るった。

 監修した叶真幹・国立広島原爆死没者追悼平和祈念館元館長は、「被爆者というと原爆に遭った瞬間にばかり目が向けられがちだが、人生全般に影響している。それを今の若い人たちにも感じてほしい」。渡部理事長も「『被爆者』という言葉ではくくることのできない、一人一人の生き方に触れて」と話す。

 A5判128ページ、オールカラー。非売品だが、1500部発行し広島県内の中学高校や大学、全国の都道府県立の図書館などに寄贈した。問い合わせはANT☎082(502)6304。(森田裕美)

(2024年2月19日朝刊掲載)

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