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社説・コラム

永田町発 核軍縮へ 保有国動かせるか 来月 国連安保理で討論会

主題に首相の意向 外相、議論促進に意欲

 岸田文雄首相は国連安全保障理事会(安保理)議長国として3月上旬に開く公開討論会の主要テーマに核軍縮・不拡散を据えた。米ニューヨークの国連本部に上川陽子外相を送る方針で、核保有5大国である米中ロ英仏の安保理常任理事国と向き合う。核軍拡の様相も漂う中、「核兵器のない世界」へ首相が重んじる核保有国との議論を深められるかが焦点となる。

 日本は3月、国連では総会と並ぶ最高機関とされる安保理の議長国を務める。これに合わせて公開討論会を企画。常任理事国のほか、韓国やスイスなど日本と同じ非常任理事国の代表も参加する。

 議題設定には首相の意向が働いた。複数の外交筋によると、数ある安全保障の課題から紛争解決とともに核軍縮を選んだのは「停滞する軍縮の機運を反転させたい」との判断だった。

 討論会に臨む予定の上川外相も9日の記者会見で、首相の意をくむ姿勢を鮮明にした。昨年9月の国連総会での首相の演説を引き、「核保有国と非保有国の間の議論を促進するための協力を具体化する」と強調した。

 首相は2021年10月の就任以来、「核なき世界」に向けて核保有国を巻き込む必要性を繰り返してきた。「保有国を動かさなければ現実が変わらないと外相時代に痛感した」とし、保有国も加わる包括的核実験禁止条約(CTBT)や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)への賛同を広げようと腐心する。

 だが、最も重視する核拡散防止条約(NPT)で22年8月の再検討会議が決裂するなど核軍縮を巡る国際情勢はむしろ後退した。ロシアによるウクライナへの「核の脅し」を機に核戦力増強の動きにも拍車がかかる。

 こうした中、首相の「核なき世界」へのアプローチに異を唱える被爆者からは核兵器禁止条約への早期参加を望む声が強まる。首相周辺の一人は「禁止条約に加わらないと言うだけでは説得力がない。今回の討論会を核保有国を交えた核軍縮の新たな動きにつなげたい」と話した。

 日本被団協の田中熙巳代表委員(91)は「核保有国を巻き込むと言うのなら、被爆国として核兵器がもたらす惨状を正面から訴え、廃絶を迫ってほしい」と求めている。(樋口浩二)

(2024年2月17日朝刊掲載)

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