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海自呉地方隊創設70年 第1部 呉基地の今 <1> 空母化する護衛艦

 海上自衛隊呉地方隊は7月1日、創設70年となる。旧海軍とともに発展した呉を拠点に戦後、国防だけでなく災害支援、国際貢献など活動の幅を広げてきた。政府が「防衛力の抜本的な強化」を掲げ、防衛費を大幅に引き上げる中、基地はどう変わっていくのか。歩みをたどり、地域との関わりを含めて今後を見通す。第1部は、呉基地の今の姿を探った。(仁科裕成)

戦闘機搭載 洋上拠点に

「攻撃型になり得る」懸念も

 さまざまな種類の艦艇が並ぶ呉の港でひときわ目を引く巨大な護衛艦がある。海上自衛隊呉基地を母港とする「かが」だ。2022年3月に民間ドックで改修を始め、船首は四角形に広げられ、甲板にはイエローの線が引かれた。工事は今年3月にいったん完了する予定だ。

 改修は事実上の「空母化」を図るためとも指摘される。短い滑走で離陸し、垂直着陸できるステルス戦闘機F35Bの搭載、運用を想定しているからだ。

 艦首から艦尾までが平らな「全通甲板」を持つ、ヘリコプター搭載艦として17年3月に就役した。基準排水量1万9950トン、全長248メートル、最大幅38メートル。内部に格納庫を有する。

 今回の改修では戦闘機が発着艦できるよう甲板に耐熱塗装を施した。船首を四角形にしたのは、気流の発生を抑制する目的だ。23年11月には、山口県沖の瀬戸内海などで最大速力などを試したとみられる。海上幕僚監部(東京)によると、今年4月以降はさまざまな試験をし、26年度から2次改修に入る。

島しょ部を防衛

 「空母化」は南西諸島の防衛力強化が背景にある。防衛省は陸上自衛隊のミサイル部隊などを相次いで配備するなど「防衛の空白地帯」とされた島しょ部地域の防衛を強化している。飛行場の少ない太平洋上の拠点としての役割も想定し、「防空任務の円滑な実施に大きく貢献する」とする。同型の護衛艦「いずも」と合わせた2隻の改修に取り組んでいる。

米軍と発着試験

 24年度は航空自衛隊の新田原基地(宮崎県)にF35Bを配備し、鹿児島の馬毛島(まげしま)に整備中の航空基地内に、「かが」と「いずも」の甲板を模した発着訓練場を整備する。「かが」などへ搭載が想定され、米軍との相互運用性も高まる見込み。「いずも」は既に米軍と合同で、洋上での発着試験を実施済みだ。

 戦後、政府は「必要最小限度の防衛力」のみを認めている憲法を理由に、空母を保有してこなかった。「かが」などの改修については、保有できないとされる「攻撃型空母」には当たらないとの立場だ。防衛省は「あくまでも多機能な護衛艦」と説明する。

 ただ、設備や機能から運用次第では攻撃型空母になり得ると懸念する声もある。県原水協の神部泰代表理事は「装備の強化を拡大させる呉基地の象徴。原則としてきた専守防衛から逸脱する可能性がある」とする。

 「かが」の國分一郎艦長は「乗員も注目の大きさを感じ、任務に備えて訓練に励んでいる。『新生かが』で、国民の期待に応えられる活動をしていきたい」と話した。

(2024年2月20日朝刊掲載)

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