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連載・特集

『生きて』 広島東洋カープ元選手・監督 山本浩二さん(1946年~) <20> 提言

痛みに強い選手になれ

  ≪昭和の現役引退から38年、平成の監督退任から19年。令和のプロ野球に思う≫
 今の選手は本当によく練習するよ。わしらの頃のオフはゴルフばっかりだったけど、今はずっと練習して意識も高い。ただ言いたいこともある。

 昔は痛みに強くさせられたんだけど、体が万全ではなくても試合に出た。痛みを我慢し、お客さんが見に来てくれている以上、レギュラーは出なきゃいかんという教えだったからね。今の野球に全ては当てはまらないかもしれんが、そうしないといけないんじゃないかと思う。

 選手はね、どこかがちょっと痛くて休むと、治まった後に同じ症状がきたら、気持ちはまた休もうとなるのよ。ところが、痛みはあるんだけど、我慢して出て、次の痛みがきたら、あの時に出たから出られるとなる。それが数年や10年で精神面も含め、大きな差になっていくのよ。

 今はベストな環境で試合に出るという時代だし、トレーナーやトレーニングコーチも休めと進言する。良いか悪いかは歴史が違うから否定はせんけど、そういう野球になっている。プレーの役割や気候が変わってきたのもあるけど、どうなのかな。

  ≪今月半ばに日南キャンプを視察。就任2年目の新井貴浩監督とチームに期待する≫
 監督業は苦しいのよ。それをあいつは表情に出さず、選手を𠮟ることなく、頑張れと言い続けた。その根本は家族だと、やり通したから選手がその気になり、浸透した。選手起用の懐も深いし、大したもんだよ。

 今年は優勝と言い倒し、どんな状況でも対応できるチームづくりの準備が去年よりできているよな。不安材料は今後出てくるだろうけど、競争によって投打ともチーム力は上がってきている。ベテランもうかうかできんやろ。去年とは違う夢があるよ。楽しみな要素が多い。本当に楽しみよ。=おわり (この連載は特別編集委員・木村雅俊が担当しました)

(2024年2月22日朝刊掲載)

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