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被爆者団体 65年の歩み 東京の「東友会」が記念誌

 東京都の被爆者団体「東友会」が1958年の結成から65年の歩みを記念誌「伝えつづける被爆者の願い」にまとめた。原爆被害を国民が受け入れるべきだとした国の「受忍論」にあらがう活動や、著名人の協力も得て資金を集めた歴史をつづる。広島で被爆した家島昌志代表理事(81)は「最後の記録集との覚悟で編んだ」としている。

 結成当初は年数回、今は毎月発行する機関紙「東友」の節目節目の紙面データを載せながら、活動を振り返っている。米国の水爆実験で静岡県のマグロ漁船第五福竜丸が被曝(ひばく)した「ビキニ事件」の2年後の56年には前身の組織ができたと記す。

 81年に旧厚生省の有識者懇談会が示した原爆受忍論については「被爆者への裏切りにも等しい」と断じ、被爆証言の輪を広げる運動を強化したと紹介。当初から柱に据える電話相談事業では、「東友会に電話をかけますと、いつも『モシ、モシ…』とあたたかい声がかえってきて、私はホッとします」との相談者の率直な声を伝えている。

 資金集めでの黒柳徹子さんや吉永小百合さん、西田敏行さんたち著名人の後押しも報告。3人が平和のメッセージを揮毫(きごう)した扇子の販売を伝える94年7月発行の東友紙面を載せた。

 都内の被爆者は約3800人とピーク時の3分の1に減ったが、職員5人の東友会には今も年約1万2千件の相談が届く。勤務歴41年の村田未知子事務局長(73)は「国会や省庁に近く、さまざまな要望に適した東友会の存在意義は色あせない」と話している。

 A5判、455ページ。1500部作り、希望者には送料(400円程度)のみで郵送する。東友会☎03(5842)5655=月―金曜午前10時~午後5時、土曜午前10時~午後3時。(樋口浩二)

(2024年2月26日朝刊掲載)

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