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連載・特集

海自呉地方隊創設70年 第1部 呉基地の今 <4> 掃海隊

世界でトップ級の能力

最前線の水陸両用戦担う

 宮崎県沖約40キロの日向灘にグレーの艦艇が集結した。昨年11月末、米軍との合同訓練と同時に行われた海上自衛隊掃海隊群による機雷戦訓練だ。呉基地を母港とする掃海母艦ぶんご(5700トン)など、全国の各基地から集まった約20隻が模擬機雷を取り除く訓練などに取り組んだ。

 「機雷の性能や威力は向上している。近くで見ても岩にしか見えないもの、海底に設置して狙った船が上を通過するタイミングで浮き上がらせて爆破させるもの…。巧妙な仕掛けがある」。掃海艇やくしま(570トン)の艇内で男性隊員はそう説明した。

 訓練では、海底の重りと機雷をつなぐケーブルを切断する装置を海中に下ろしたり、音波などで機雷を見つけて爆破処理する無人ロボットを遠隔操作したり。数隻ずつ協力しながら、6時間以上にわたって連携を確認した。

実戦に近い部隊

 世界でもトップレベルとされる海自の掃海能力。訓練は陸奥湾や伊勢湾でも実施し、小笠原諸島の硫黄島付近では実際の機雷を使っている。隊員は「最も実戦に近い部隊とされている。だから訓練を繰り返し、技術を磨く」と話す。

 全国に五つある海自地方隊の中で最も遅い1954年に誕生した呉地方隊の歴史の幕は、掃海によって開いたともいえる。戦時中、米国は日本の周辺海域に機雷を敷設し、食料などの輸送を阻止する「飢餓作戦」を取った。戦後、旧海軍は解体されたが、機雷は依然として残り、航路の安全確保が急務だった。

 呉地方総監部によると、米軍と旧日本軍によって設置された機雷は計約6万6千個。危険海域の約60%は瀬戸内海だった。海上保安庁などに移った元海軍人たちが処理に当たり、自衛隊発足後に掃海業務は海自へと引き継がれた。呉基地には現在、海自掃海隊群の掃海母艦など6隻がある。

輸送艦 16年編入

 掃海隊群は2016年に輸送艦などを編入し、水陸両用戦の能力を集約。掃海能力を持つ最新鋭の護衛艦「FFM」2隻も加わった。ステルス性能を高め、省人化も進めた多機能型の次世代の主力艦だ。日向灘の訓練には、このうちFFMくまの(3900トン)が初参加。搭載している新たな無人機雷排除システムの運用と隊員の習熟を図った。

 中国の海洋進出が活発化する中、防衛省はFFMを今後20隻以上に増やすともに長射程ミサイルの搭載を計画する。海自は「呉基地への配備の可能性もある」としている。掃海隊群は、島しょ部奪還を想定した水陸両用戦を担う最前線の部隊として装備が増強されている。

(2024年2月24日朝刊掲載)

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