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社説・コラム

社説 ウクライナ侵攻2年 ロシアの無法 止めなければ

 ロシアがウクライナに侵攻して、きょうで2年になる。軍事力で他国の主権を踏みにじり領土を奪い取ろうとする暴挙が続いている。

 ウクライナは欧米の軍事・経済支援を得ながら抵抗している。ただ、昨年6月からの反転攻勢は十分な成果が上げられず、弾薬不足が深刻さを増している。先週は、東部の要衝アブデーフカからの撤退を余儀なくされた。

 数十万規模とされる双方の死傷者をこれ以上増やさないため、即時停戦と対話による事態収拾、和平が望ましい。とはいえ、両者の溝は深く、実現は極めて難しい。

 出口の見えない中、ウクライナがどれだけ持ちこたえられるか。支援疲れの色濃い欧米がどこまで支えられるか。剣が峰に立たされている。

 ウクライナの傷は深い。無差別攻撃や虐殺による民間人の死者は1万人を超えた。子ども連れ去りという戦争犯罪も起きた。国外避難者は昨年末時点で600万人を上回る。国内に残ってもミサイル攻撃などにさらされ続ける。

 ロシアによる侵攻は2014年のクリミア半島の強制編入にさかのぼる。力による国境変更は国際法違反であり、第2次世界大戦後の国際秩序に対する挑戦でもある。

 国連での拒否権を認められた安全保障理事会の常任理事国が、国際秩序を危うくしているのだから、始末に負えない。国連が機能不全に陥るのも無理はあるまい。

 核兵器をちらつかせた脅しや、ベラルーシへの戦術核兵器配備などの蛮行も重ねている。被爆地はもちろん、世界にとっても看過できない。

 侵攻間もなく、北欧のフィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に加盟を申請した。軍事的中立を長年維持してきた両国の歴史的転換である。ロシアの言語道断の振る舞いが、国際社会に与えた衝撃の大きさを示している。

 しかもロシアは今なお攻撃的な姿勢を崩していない。おとといの現地報道によると、メドベージェフ前大統領は首都キーウ再侵攻が必要になる可能性を指摘した。全土を制圧する野望を捨て去っていない証しとなる発言だろう。

 米国の動向も懸念される。野党共和党の抵抗でウクライナ支援予算案が通らない。背景にいるのは、秋の米大統領選の共和党最有力候補、トランプ前大統領だ。ロシア寄り発言で物議を醸している。欧州各国は、大統領返り咲きを想定して、たとえ米国抜きでもウクライナを支え続ける覚悟を迫られている。

 救いはウクライナ国民が気骨を持ち続けていることだ。今月上旬の調査では「必要な限り戦争に耐える」と答えた人が73%に達したという。侵攻間もない22年5月と同じ高い水準を保っている。

 日本を含む国際社会が、万が一にもロシアの無法を止められなければ、世界はどうなってしまうだろうか。横暴な指導者たちがプーチン氏をまねて軍事力を誇示することになりかねない。力こそ正義という群雄割拠の時代に世界を逆戻りさせてはならない。

(2024年2月24日朝刊掲載)

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