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社説・コラム

天風録 『ウクライナ侵攻2年』

 2年前のきょう、12歳になったばかりのイエバ・スカリエツカさんは日記を書き始める。人生が一変した日だ。朝5時、通りに激しく響く音で目覚めた。「これ…、爆発音だ」「心臓がこおりついた」。ウクライナにロシアが侵攻してきた▲国境近くのハルキウに住んでいた少女。手が震え、歯はガチガチと鳴ったが、祖母とアパートから地下室へ。友達と慰め合いながら、爆撃下で悲惨な避難生活を送る。命からがら国外脱出するまでの約2カ月をつづる▲21世紀の「アンネの日記」とも思える。昨年末に刊行の邦訳「ある日、戦争がはじまった」からはつぶされそうな心の叫びが伝わる。この2年間で何人の「イエバさん」がおぞましい戦火を目にしただろう。子どもも大勢が殺され、今も爆撃におびえる▲昨年、ゼレンスキー大統領は被爆地を訪れて語った。広島のように、ウクライナの再生を夢見ている―。だがウクライナは苦戦しており、国際社会もロシアの暴力を止められずにいる。民間人の死者は1万人を超えた▲原爆資料館はウクライナ語の音声ガイドを追加した。戦後、訪れる大勢のために―と在日大使館から提案されて。その日が早く訪れることを願う。

(2024年2月24日朝刊掲載)

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