朝凪(あさなぎ) 「理不尽」を見逃さない
24年2月28日
事故で昏睡(こんすい)状態に陥った主人公が10年後に意識を取り戻して目にしたのは、かつてと同じ大統領が強権を発し、人々が疑問を口にするのも許されぬ社会―。ベラルーシ出身の作家フィリペンコが2014年に著した「理不尽ゲーム」は、かの国々ではもはや寓話(ぐうわ)ではなさそう。
ナワリヌイ氏獄中死の報に触れ、この本を思い出した。ウクライナ侵攻を2年も続けるロシアでも、本書が描く隣国ベラルーシでも、政権に疑義を唱える人の不審死や拘束が相次ぐ。
こうした状況は「突如として生まれるわけではない」と本書の訳者奈倉有里氏。ここに至るまでに見過ごしてはならない多くの「理不尽」があったというのだ。主人公の「昏睡」は、理不尽に黙す社会の隠喩にほかならない。私たちの足元はどうだろう。さあ目を覚まさねば。(平和メディアセンター・森田裕美)
(2024年2月28日朝刊掲載)
ナワリヌイ氏獄中死の報に触れ、この本を思い出した。ウクライナ侵攻を2年も続けるロシアでも、本書が描く隣国ベラルーシでも、政権に疑義を唱える人の不審死や拘束が相次ぐ。
こうした状況は「突如として生まれるわけではない」と本書の訳者奈倉有里氏。ここに至るまでに見過ごしてはならない多くの「理不尽」があったというのだ。主人公の「昏睡」は、理不尽に黙す社会の隠喩にほかならない。私たちの足元はどうだろう。さあ目を覚まさねば。(平和メディアセンター・森田裕美)
(2024年2月28日朝刊掲載)