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祈りの場 混乱どう対応 中核派5人逮捕 デモと静寂 両立に腐心 広島市

 被爆者を悼む「原爆の日」の混乱が刑事事件へ発展した。28日、広島県警は中核派活動家5人を暴力行為法違反容疑で一斉逮捕に踏み切った。ここ数年、広島市の平和記念式典では、原爆ドーム(中区)周辺でのデモ活動を巡り市民団体同士が対立してきた経緯がある。8月6日の祈りの場はどうあるべきか―。市は対応を迫られている。(野平慧一)

 関係者によると、5人は昨年8月6日、岸田文雄首相の式典参列に反対するため、市民団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」主催のデモ行進に参加。集合場所のドーム前には、拡声器の使用自粛を求める市民団体「静かな8月6日を願う広島市民の会」など主張の違う複数の団体が数百人規模で集まり、小競り合いになったという。

 市や県警は例年通り、団体間の衝突回避や安全確保のためにドーム周辺で警戒に当たり、市職員約60人が通行人の通路向けにロープを張っていた。その際に、5人の容疑者は共謀し、市職員に腕を組んで体当たりした疑いが持たれている。

 市によると、式典時には毎年、複数の団体が拡声器や太鼓を使ったデモを続けており、市民から苦情が寄せられていた。市は2019年から、参列者に騒音が聞こえたかなどを確認するアンケートを実施。同実行委とデモ音量の抑制などで話し合いも続けていた。

 一方で、21年には議員提案で式典を「厳粛の中で行う」と定めた市の平和推進基本条例が施行。実効性ある市の対応を求める同市民の会など3団体の請願も今月27日に市議会で採択されるなど、デモ活動への対応強化を促す声もある。

 同実行委はこの日市役所で記者会見を開き、宮原亮事務局長(48)が「反戦運動をつぶそうという弾圧だ」と批判。今夏もドーム前をデモの集合先にする考えを示した。

 事件を受け、市市民活動推進課は「市民に危害が及んではいけない。再発防止策を県警と連携して協議中」とした上で「表現の自由と鎮魂の場を守るために模索していく」としている。

(2024年2月29日朝刊掲載)

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