被爆の記憶 どう向き合う 広島大平和センター公開講座 新技術の生成AI 課題も指摘
24年3月4日
広島大平和センターの市民公開講座「多極化社会と被爆の記憶~普遍的な平和を創るために」が、広島市中区の広島国際会議場であった。記憶学の第一人者、アンドリュー・ホスキンス英国国立グラスゴー大教授ら6人が登壇。ウクライナやパレスチナで戦争が続き核使用も懸念される世界情勢を踏まえ、ヒロシマの記憶にどう向き合うかについて意見を交わした。
ホスキンス教授は「広島の忘却―デジタル社会と『生ける記憶』の危機」と題して特別講演した。歳月とともに被爆者が亡くなっていく中、当事者の「生ける記憶」をどう受け継いでいくかと問題提起。デジタル技術は証言などの記録や整理、保存には有用な一方、生成AIによる「記憶」の独り歩きや暴走の危険性があると指摘した。その上で「被爆者の記憶が作り替えられないよう十分な保護と法整備が必要だ」と述べた。
同センターのファンデルドゥース瑠璃准教授は、被爆直後の米報道や被爆者の手記などを基に「75年は草木も生えない」という「終末言説」が、後に被爆地市民の復興の原動力となり、平和都市としてのアイデンティティー構築につながった経緯を解説。情報が操作され得る時代に、ヒロシマの記憶が生き続ける方策を示唆した。
原爆資料館(中区)の小山亮学芸員は今月展示の入れ替えをした本館の「魂の叫び」コーナーについて紹介した。子を残して被爆死した親の遺品をスクリーンに示し、「多極化する世界の中でも変わらない親子や人と人との結びつきを感じ取って」と呼びかけた。
続いて同センターの川野徳幸センター長たちも加わり、パネル討論があった。新たな技術の可能性と課題を見極めながら記憶の忘却にあらがう方法を語り合った。
同センターと同資料館の共催。市民約100人が耳を傾けた。(森田裕美)
(2024年3月4日朝刊掲載)
ホスキンス教授は「広島の忘却―デジタル社会と『生ける記憶』の危機」と題して特別講演した。歳月とともに被爆者が亡くなっていく中、当事者の「生ける記憶」をどう受け継いでいくかと問題提起。デジタル技術は証言などの記録や整理、保存には有用な一方、生成AIによる「記憶」の独り歩きや暴走の危険性があると指摘した。その上で「被爆者の記憶が作り替えられないよう十分な保護と法整備が必要だ」と述べた。
同センターのファンデルドゥース瑠璃准教授は、被爆直後の米報道や被爆者の手記などを基に「75年は草木も生えない」という「終末言説」が、後に被爆地市民の復興の原動力となり、平和都市としてのアイデンティティー構築につながった経緯を解説。情報が操作され得る時代に、ヒロシマの記憶が生き続ける方策を示唆した。
原爆資料館(中区)の小山亮学芸員は今月展示の入れ替えをした本館の「魂の叫び」コーナーについて紹介した。子を残して被爆死した親の遺品をスクリーンに示し、「多極化する世界の中でも変わらない親子や人と人との結びつきを感じ取って」と呼びかけた。
続いて同センターの川野徳幸センター長たちも加わり、パネル討論があった。新たな技術の可能性と課題を見極めながら記憶の忘却にあらがう方法を語り合った。
同センターと同資料館の共催。市民約100人が耳を傾けた。(森田裕美)
(2024年3月4日朝刊掲載)