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[国際女性デー2024] 関東の若者ら 講演やアニメ制作 ジェンダー視点 核兵器を考える 男性偏重の国際政治に一石

 日本ではなじみの薄いジェンダーと核兵器の問題を接続させて考えようという試みが、日本の若者から生まれている。上智大4年の徳田悠希さん(22)=東京=たちが団体「GeNuine(ジェヌイン)」を結成。講演活動やアニメーション制作を通じて「核兵器のない世界」に向けた議論に多様な視点を据える重要性を発信している。8日は国連が定める国際女性デー。男性偏重の国際政治の現状に、一石を投じる被爆国の若者の活動や思いとは―。

 メンバーは主に関東に暮らす20代の大学生や社会人たち7人。明星大4年の松永優佳さん(22)=東京=をはじめ、かねて関心のあったジェンダー視点を入り口に、活動に加わった人もいる。「男らしさ」が結びついた政治と核兵器依存の関係などを説く講演活動やアニメーション制作も進めている。

 団体の設立は2023年4月。きっかけは22年6月にオーストリア・ウィーンであった核兵器禁止条約第1回締約国会議だった。安全保障をジェンダー視点から活発に議論する様子を目の当たりにした徳田さんが「日本でも広めたい」と仲間に呼びかけた。「gender(性)」と「nuclear(核)」の頭文字を取った団体名は英語で「本物の、心からの」を指す言葉でもある。

 ジェンダーは「社会的・文化的につくられる性別、つくられた女・男らしさ」。性別を巡るステレオタイプな価値観を問う視点を核問題に取り入れることで「被害の多層性と、その構造がより浮かび上がってくる」と徳田さんは語る。

 アニメーション制作の中で、改めて気付かされているという。核兵器使用を巡る歴史的事実を説明しようとすると、どうしても「政策決定は男性、銃後を守るのが女性、という関係性が強調される」ストーリーになる。被爆者の体験証言についても「女性は『母親』『結婚差別』などと結びつけられ、画一的な女性像からこぼれ落ちる被害や苦しみが見えにくくなりがちです」。

 国連軍縮研究所によると、「ジェンダー視点」を明記した核兵器禁止条約でも、22年の第1回会議に出席した各国代表団の女性は3割だった。依然、廃絶を巡る議論の主導権や決定権を持つ当事者の偏りがうかがえる。

 「男性中心の視点では見えてこなかった実態を伝え、共有していきたい」と徳田さん。若者発の政策提言も目指す。自分たちの行動が、核兵器に頼る社会にあらがう力になると信じて。(小林可奈)

(2024年3月4日朝刊掲載)

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