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ウクライナ駐日大使インタビュー 核なき世界を100%支持 武器供与あれば戦況打開

 ロシアによる侵攻が続くウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が、中国新聞の取材に応じた。欧米から適切な武器供与があれば、戦況の膠着(こうちゃく)を打開できるとの見方を強調。ロシアが核の脅しを続ける中、被爆地に反核の声を上げ続けるよう求めた。(編集委員・田中美千子)

  ―侵攻開始から2年が過ぎました。
 ウクライナ軍は反撃できている。領土の一部を奪還し、ここ半年は前線も大きくは動いていない。ロシア軍の犠牲や損失は兵士、戦闘機のどの数を見ても甚大だ。

 ただ複雑な現状も認めざるを得ない。私たちには今、有効な武器や弾薬が十分にない。ロシア軍は占領した領土に無数の地雷を敷設しており、われわれが前進しようとすれば兵士の命を危険にさらす。長距離ミサイルやF16戦闘機が必要だ。

  ―欧米の支援疲れも指摘されています。
 それはロシアのプロパガンダだ。ウクライナは最近だけでもドイツ、フランス、オランダなどと安全保障協定を結んだ。これを疲れと言うのか。ロシアは北朝鮮やイランに支援を求めたとされる。戦略もウクライナの方が優れている。武器さえあれば戦況は変わる。

  ―ロシアは核使用のどう喝を続けています。
 絶対許されない。ウクライナも米英仏も立場は明確だ。ウクライナに核を使えば、ロシアは強烈な報復を受けるだろう。

 ウクライナは「核兵器なき世界」を100%支持する。廃絶の道筋はロシアや中国、北朝鮮を含む全ての国で進める必要があり、確かに難しい。それでも訴え続けるべきだ。世界をより安全にする唯一の方法だ、と。

  ―ウクライナ南部ザポロジエ原発も今なおロシアに占拠されています。
 非常に危険だ。ロシアは原子炉6基を備えた欧州最大級の原発に武器を持ち込み、周りに地雷を敷設した。私たちは国際原子力機関(IAEA)に常駐を求めているが、数人が派遣されただけ。ロシア軍を撤退させない限り、安全は戻らない。

  ―ゼレンスキー大統領は昨年5月、広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席しました。どう評価しますか。
 歴史的だった。日本がインドやブラジルなどの新興・途上国を招いた意義も大きい。各国はウクライナ情勢についても率直に議論した。原爆資料館(中区)の音声ガイドにウクライナ語が追加されたのも、サミットがきっかけだ。日本に避難しているウクライナの人々に学びを深めてほしい。

  ―日本政府、そして被爆地に期待することは。
 広島で強く印象に残ったことの一つは、爆心地そばのタワーから見た光景だ。見事に復興している。日本の知識や技術を伝授してほしい。

 ロシアは数日前も南部オデッサを襲い、寝入っていた子どもを含む12人を殺した。文明的な人間はロシアと違い、歴史に学ぶことができる。核兵器はどの国にも二度と使われてはならない。核なき平和と安全保障の確立へ、広島と共に闘いたい。

(2024年3月6日朝刊掲載)

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