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日鉄呉跡地 防衛活用案 国が一括購入意向 多機能な複合拠点

 日本製鉄(日鉄、東京)が昨年9月末に事実上閉鎖した瀬戸内製鉄所呉地区(呉市)を巡り、防衛省は4日、防衛力の抜本強化に向け、跡地を一括購入して「多機能な複合防衛拠点」を整備したい意向を広島県と市へ申し入れた。実現すれば、市の経済を長く支えてきた製鉄所が大規模な防衛施設へ転換する。(河野揚、長久豪佑)

 県や市によると、同省は跡地約130ヘクタールを早急に一括購入したい考え。海上自衛隊呉基地のそばにあり、複合防衛拠点として、民間誘致を含む装備品などの維持整備・製造基盤▽ヘリポートや物資の集積場などの防災拠点と、艦艇の配備、訓練場などの部隊の活動基盤▽岸壁などを活用した港湾―の三つの機能を想定している。

 すでに日鉄と交渉を進めており、県と市を含む4者での協議を要望。この日、同省地方協力局や中国四国防衛局の担当者が玉井優子副知事と新原芳明市長をそれぞれ訪ね、申し入れ書を渡した。11日に市議会にも説明する予定という。

 製鉄所は1951年に旧呉海軍工廠(こうしょう)跡地に整備され、2019年に日鉄の子会社となった。日鉄は21年9月に高炉、23年9月末に全設備を停止した。解体には約10年かかるとの見通しを示している。

 20年2月の閉鎖発表後、県と市は跡地活用を検討してきたが、具体策を示せていなかった。県は現時点で防衛拠点を選択肢の一つとしつつ、産業用地として活用するための調査も予定通り24年度に進める方針でいる。広島県の湯崎英彦知事は「防衛省から丁寧に話を聞きたい。地域住民にとって未来に希望が持てる利活用を検討する」とのコメントを出した。

(2024年3月5日朝刊掲載)

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