×

ニュース

[ビキニ被災70年] 核禁条約「すぐ批准できず」 マーシャル諸島 ハイネ大統領インタビュー

被害者援助義務など疑問視

 米国による核実験が繰り返された中部太平洋マーシャル諸島のハイネ大統領は4日、首都マジュロの大統領府で中国新聞などのインタビューに応じた。未批准の核兵器禁止条約について、被害を受けた側も自国の核被害者の援助を求められるとして不満を示し「今すぐには批准できない」と述べた。(マジュロ発 下高充生)

 ハイネ氏は、禁止条約が全ての加盟国に核被害者の援助や環境の修復を求める点を疑問視。条約に入れば被害国でもその義務を負うことになり、「マーシャル諸島で核実験をした米国の尻拭いをわが国がしなければならないとは思わない」と強調した。ただ、条約自体は支持。被害者援助の条項が再考されれば批准できるとの認識を示した。

 マーシャル諸島は1986年の独立に当たり、米国と自由連合協定を締結。経済援助を受け、安全保障も委ねるが、ハイネ氏は禁止条約の批准判断について「最大の関心事はマーシャル諸島がどうなるかで、米国のことは考えていない」と説明した。昨年10月に交渉が決着した新たな協定により、今後20年間で受け取る23億ドルの援助を「十分ではない」と指摘した。

 一方、東京電力福島第1原発の処理水放出については「起きないよう願っていたが現実に起こった」と話した。日本政府に対し「互いを尊重し、話し合い、立場を理解してから行動しなければならない」とくぎを刺し、未処理の水が誤って放出されるなどの事故が起きないよう監視を求めた。

 また、海抜が平均約2メートルしかなく、海面上昇による水没が懸念されており、気候変動問題で「大国が十分な行動をしていない」と訴えた。

 米国は46~58年にビキニ、エニウェトク両環礁で67回の核実験をした。今月1日で70年となった54年の水爆実験「ブラボー」は特に規模が大きく、周辺の環礁の住民や近くにいた静岡県の漁船「第五福竜丸」などの乗組員たちが被曝(ひばく)した。

(2024年3月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ