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地元 歓迎と不安の声 日鉄呉跡地 防衛活用案 「実現なら活性化」「基地の拡大進む」

 昨年9月末に事実上閉鎖した呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区の跡地について、防衛省が広島県と市に「多機能な複合防衛拠点」を整備したい意向を申し入れたことが明らかになった4日、関係者や市民の間にさまざまな思いが交錯した。跡地近くには海上自衛隊呉基地がある。実現すれば街の活性化につながると歓迎する声がある一方、基地の拡大が進むことを不安視する受け止めもあった。(小林旦地、栾暁雨、開沼位晏)

 「きょう初めて提案があったので、これから話を聞いて対応を考えていく」。申し入れを受けた後、新原芳明市長は報道陣に淡々と語った。「これだけ大きな土地。常に気を引き締めて議論していかなければならない」と付け加えた。

 跡地はマツダスタジアム約36個分の約130ヘクタール。日鉄は活用方針について当初、昨年9月末までに示す意向を示していたが、これまで進展はなかった。

 製鉄所の閉鎖後、街に陰りを感じる声も出ていただけに経済界からは前向きな受け止めが目立った。市ホテル旅館組合の三島義弘理事長(64)は「目標を立てて頑張ることができなかった。悪い話ではない」。呉商工会議所の若本祐昭会頭は「活用方針が見えなかった中で候補が出てきたのは良いニュース。具体的な姿が早く決まることを期待する」と話した。

 一方、市民からは複雑な声が漏れる。50代の会社員女性は「街が活気づくことへの期待はあるが、防衛拠点化するのなら不安も大きい」。60代の会社役員男性は「基地に関係のない、若者の受け皿となる企業の誘致が望ましい」と話した。市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」広島世話人の新田秀樹さん(60)は「もっと他の道はないのか市も考えないと。抗議の声を上げていきたい」と強調した。

(2024年3月5日朝刊掲載)

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