×

ニュース

[国際女性デー2024] 女性国会議員 15% 中国地方 政府目標の半分

 中国地方5県選出の国会議員40人のうち女性は6人で15・0%と、政府が目標とする3割の半分にとどまっている。2018年施行の政治分野の男女共同参画推進法は国政選挙や地方選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう各政党に促すが、女性議員は増えないままだ。(宮野史康、樋口浩二)

 5県の女性国会議員は、自民党の小野田紀美氏(参院岡山)阿部俊子氏(比例中国)杉田水脈(みお)氏(同)高階恵美子氏(同)の4人と、立憲民主党の宮口治子氏(参院広島)、無所属の三上絵里氏(同)。全国の女性国会議員の比率は16・1%で、中国地方は下回っている。

 比例中国を除く選出県別は広島18・2%、岡山14・3%で山口と島根、鳥取はゼロ。現職がいる4政党別では立憲民主党20・0%、自民党13・3%と続き、日本維新の会と公明党はゼロとなっている。

 政府は03年に「20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」との目標を示した。しかし達成できなくなり、20年12月には時期を「20年代の可能な限り早期」に後退させた。

 与野党の一部には候補者や議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入を目指す動きもある。国際女性デー前日の7日に国会内であった超党派議連の集会には約60人が参加。会長で立憲民主党の中川正春氏は「今国会中に試案をまとめ各党に示したい。女性の候補者をつくっていこう」と呼びかけた。

会議に女性 私一人… もっと参画を

22年初当選 三上氏が見た国会

 「男性中心」が根強い国会の課題は何か。民放アナウンサーや記者を経て、2022年の参院選広島選挙区で初当選した無所属の三上絵里氏に実体験を踏まえて聞いた。(聞き手は山本庸平)

 家事や育児、介護は女性が担うという意識が社会に残っていて、政治への意欲があっても家族など周囲の理解や協力を得られない人が多いのではないか。国会が始まると東京に滞在する日が多く、地方選出の議員は家を空けることにも理解を得られにくい。政治進出を阻む大きな要因だと思う。

 私は家族の後押しで立候補を決断できたが、よく「家族の賛同があるのか」と尋ねられた。男性だとこれほど聞かれないかなと、ジェンダーギャップ(男女格差)を感じた。選挙中は街頭で「女性の声を届けて」と期待を寄せてもらう半面、「家事はちゃんとしているのか」とも聞かれた。

 さまざまな会議に出ると、十数人いて女性が私一人ということも少なくない。政策の議論に女性の視点が見逃されてきたのではないだろうか。多様性を持ち、偏らない議論をするためにも、女性の参画は欠かせない。

 22年の参院選では、当選者の3割近くを女性が占めた。昨春の統一地方選では広島でも多くの女性議員が誕生した。クオータ制の導入などでこの流れを勢いづけたい。男女の賃金格差をなくしたり、選択的夫婦別姓を実現したりする力になれるはずだ。

政治家志せる教育や環境を

 同志社大大学院の三牧聖子准教授(米国政治)の話 女性の政治進出が遅れていると言うと「女性を増やすと何かメリットがあるのか」と問う声が上がる。しかし、異なる視点を持つ多様なプレーヤーが政治を担うこと自体が価値であり、そうした一人一人の政治観を育てていくのが大事だ。

 米国も女性の政治参加は遅れている。女性大統領は出ておらず、米議会の女性議員は3割に届かない。現状を変えようとさまざまな市民団体が活動している。幼少期からの教育が重要だとして、毎年1万人の女性に社会の担い手としての意識を教える団体もある。女性が政治家を職業の一つとして思い描ける教育や環境を整える必要がある。

クオータ制
 人種や性別などを基準に一定の比率で人数を割り当てる制度。政治分野で議会の男女格差の是正を目的とするクオータ制は、2020年2月時点で世界の約60%に当たる118の国・地域で導入されている。①憲法か法律で議席の一定数を女性に割り当てる「議席割当制」②憲法か法律で候補者の一定割合を女性または男女に割り当てる「法的候補者クオータ制」③政党が規則などで候補者の一定割合を女性または男女に割り当てる「政党による自発的クオータ制」に大別される。

(2024年3月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ