[無言の証人] ゴルフクラブのセット
24年3月11日
余暇の道具 猛火に
戦争下の暗い時代でも、楽しむことはできたのだろうか。アイアンクラブは原形をとどめるが、ウッドは木製ヘッドがなくシャフトだけに。原爆資料館(広島市中区)の2代目館長、森弘助治さん(1993年に83歳で死去)方の土蔵で原爆投下後の猛火に焼かれたゴルフクラブのセットである。
爆心地から約1.8キロの白島東中町(現中区)。広島原爆戦災誌によると、この周辺は工兵橋付近を残して全焼した。当時35歳だった森弘さん自身は広島にいなかったため被爆は免れたものの、自宅にいた両親が犠牲になった。
森弘さんが館長を務めたのは62~70年。在任中には戦災誌の編集にも取り組み、被害実態を明らかにして伝えることに尽力した。ゴルフセットは就任から2カ月後の62年4月、資料館に託した。(小林可奈)
(2024年3月11日朝刊掲載)