×

ニュース

「平和の鐘」調査結果 一冊に 広島の市民グループ 資料ふんだん 鋳造背景も

 広島市の市民グループ「響け!平和の鐘実行委員会」(高東博視代表)が市内と近郊に点在する原爆犠牲者の慰霊や平和を願う鐘について調査し、その成果を「ひろしまの平和の鐘」にまとめて出版した。地図や写真を添えて、造られた背景や携わった人々の思いを紹介している。

 メンバーが2018年から寺院や教会約130カ所を訪ね、計642カ所にアンケートを実施。原爆や戦争、平和に関する鐘が少なくとも23あることが分かったという。国内や海外についても調べ、盛り込んだ。

 同会は毎年原爆の日の朝、ひろしまゲートパーク(中区)に立つ「平和の鐘」を鳴らして祈念式を開いている。占領下だった復興期の鋳造で、平和記念式典で突かれる鐘としては2代目。現在、式典で原爆投下時刻の午前8時15分に鳴らされる鐘は5代目に当たる。高東さんたちは、五つの鐘がたどった歴史に思いをはせ、2代目の存在を広めようと活動する中で「地域にある他の鐘のことも広く知ってもらおう」と調査を実施。公益財団法人ヒロシマ平和創造基金などの助成を活用し、出版にこぎ着けた。

 本書では、五つの鐘が製造されたいきさつなども詳述している。2代目は「被爆した金属で鋳造することで、ヒロシマの悲惨を後世に伝えよう」という職人たちの思いの結晶だという。設計図や鋳物職人らの写真など、貴重な資料を載せる。

 執筆を主に担った松波龍一さん(76)=佐伯区=は「それぞれの鐘に物語があり、豊かな音色で平和を訴え続けている」と力を込める。283ページ。212冊を広島市内の公立図書館や公民館などに寄贈した。通販サイトのアマゾンで購入できる。2640円。(新山京子)

(2024年3月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ