×

ニュース

若者 映画通じ原爆考える 「オッペンハイマー」 広島で試写会 100人参加

 原爆開発者の葛藤を描き、米アカデミー賞で計7部門を受賞したクリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」の若者向け試写会が12日、広島市中区の八丁座であった。地元の高校生や大学生たち約100人が招かれ、上映後に登壇した元広島市長の平岡敬さん(96)、詩人のアーサー・ビナードさん(56)、呉市出身の映画監督森達也さん(67)と作品を巡る論議も繰り広げた。

 映画は、米国の原爆開発を主導した物理学者のオッペンハイマーが戦争の勝利で手にした栄光と、戦後にソ連のスパイ容疑をかけられ、公職を追われる歩みをたどる。

 ゲストで登壇した平岡さんは「広島の立場としては、核兵器の恐ろしさがもっと描かれていいと感じた」と印象を語り、「科学の成果が殺人兵器に使われるといった、今に通じる問題を考えさせられる。日本にも、異なる考えを排除する『赤狩り』の時代があった。再び繰り返してはいけない」と訴えた。

 ビナードさんは「観客がオッペンハイマーになり、インサイダー(内部関係者)の視点で核開発計画の残酷さに立ち会える。今までにない戦争映画」と話し、「米国にも実験や開発で被曝(ひばく)した人がいる。映画のメッセージは『考えろ』ということだ」と指摘した。

 参加した高校生から「どうすれば核なき世界が訪れるのか」「自分に欠けていた視点をもらえた」などの質問や感想が出て、論議は熱を帯びた。森さんは「メディアが伝えない戦争や紛争もある。隠されたものを見抜く想像力を持ち、世界のうめきを聞いてほしい」と呼びかけた。

 映画は3時間の大作。試写会は29日の国内公開を前に、配給会社のビターズ・エンド(東京)が企画した。(渡辺敬子)

(2024年3月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ