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国連安全保障理事会 外相、核禁条約に触れず

 上川陽子外相は18日午前(日本時間同日午後)、「核軍縮・不拡散」をテーマにした国連安全保障理事会の閣僚級会合に議長として出席した。

 上川陽子外相は核兵器禁止条約に触れなかった。対照的に条約を批准するマルタやエクアドルは意義を強調。核兵器保有国と非保有国の議論を促す役割を果たし切れなかった。

 「禁止条約の加盟拡大に取り組む」。マルタの代表は演説でこう宣言した。エクアドルとシエラレオネも全ての国の加盟を求めた。いずれも日本政府が説く核拡散防止条約(NPT)の重要性を認めた上で、禁止条約はNPTを補完する存在だと説いた。

 一方、上川氏は「核なき世界の実現に向けた基盤がNPTだ」と唱え、禁止条約への言及は避けた。条約と距離を置く米国を重視した格好で、会合後は「条約には核保有国が一カ国も参加していない」と従来の見解を繰り返した。

 政府が狙った「保有国を巻き込んだ議論」(首相周辺)も深まったとは言い難い。会合では米国と中国、ロシアとの間の溝が目立った。

 米国は中ロを名指しし、「兵器を規制する2国間協議に今すぐ無条件で応じる」と呼びかけた。しかし中国は「米国が率先して核兵器を減らし、他の保有国が核軍縮に取り組める環境をつくるべきだ」と反発。ロシアも「米国と北大西洋条約機構(NATO)がロシアへの敵対的姿勢を見直さない限り対話はできない」と拒絶した。

 中ロは上川氏が新設を表明したFMCTのフレンズ会合に加わる気配もない。会合への参加を表明した米国とは対照的で、保有国間の連携は進まず日米の協調ぶりが際立った。(宮野史康)

緊急性欠く外相演説 本質に迫っていない

 核兵器廃絶国際キャンペーンICAN(アイキャン)の川崎哲(あきら)国際運営委員の話 上川外相の演説は、核兵器を減らし、なくすために保有国とどう向き合うかという緊急性に欠けていた。核軍縮を主題にした会合の開催自体は評価できるが、問題の本質に迫ったとは言えない。核兵器禁止条約に一言も触れなかった点も国際社会の潮流を踏まえれば不自然だ。

 米国やロシアは核兵器を持つ弁明を重ね、対立国を非難するばかり。核抑止も肯定し、「核なき世界」を目指す姿勢は希薄だった。国連のグテレス事務総長は核軍縮こそ保有国の「責任」だと強調したが、当事者からは全く感じられなかった。

(2024年3月20日朝刊掲載)

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