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中央図書館 膨らむ移転費 広島市 当初から35億円増 物価高など影響 予定外賃借料も

 広島市が進める市立中央図書館(中区)の移転再整備で、概算事業費が膨らみ続けている。現時点で当初の計画より35億円多い131億円。市は移転先となるJR広島駅前の商業施設「エールエールA館」(南区)のフロア取得費や整備費が、物価高騰で増えた点などを要因とする。ただ、予定外の賃借料も発生しており、不透明な総事業費を懸念する声が出ている。(野平慧一)

 「見通しが甘過ぎる。全体でいくらの費用がかかるのか」。13日の市議会予算特別委員会で市議の一人が増額の続く事業費に対する市の見解を問うた。今後必要な賃借料や修繕費が未確定で事業費の総額が示せていないとして、問題点を追及した。

 移転再整備は老朽化する施設の集約と機能の更新が目的で、中央図書館と映像文化ライブラリー(中区)をA館に移す。郷土資料館(南区)の一部機能も統合。7月の着工、2026年度当初の開館を目指している。

事業費131億円に

 概算事業費131億円の内訳は、A館の8~10階などのフロア取得費69億1千万円、整備費60億9千万円、引っ越し費1億円。市議会定例会で審議中の24年度一般会計当初予算案に54億4300万円を盛り込んでいる。別に7~9階と地下2階の一部の賃借費7100万円も計上。取得へ地権者との交渉が継続中で、当面は賃借して整備に取りかかるためという。

 市が初めて概算事業費を示したのは22年2月。A館への移転を96億円と見積もった。ところが、23年1月に公表した再整備の基本計画では18億5千万円増え114億5千万円になった。土地と建物の価格上昇を理由に、23年9月には121億4千万円に増額。さらに、資材費や人件費が上がったとして131億円に膨らんだ。

 移転再整備に関連して市は今年1月、中央図書館に所蔵する旧広島藩主浅野家から寄贈された和漢の古書、絵図などの「浅野文庫」や広島ゆかりの文学資料の保存・活用へ、専門図書館を市長公舎の敷地に新設する計画を公表した。概算整備費は37億円を見込む。こちらも当初はA館へ移す計画だった。

手狭になる恐れ

 一方、A館移転から一転して現在地での存続を決めたこども図書館は、併設するこども文化科学館のリニューアルに合わせて耐震化し、費用を約30億円とはじく。こども図書館移転後の空きスペースに入る予定だった近くの青少年センターについては一部機能を科学館内に取り込むことにし、手狭になる恐れがある。

 市は広島駅前は利便性が良く、若者の居場所づくりや起業相談など多様なニーズに応えられるとして中央図書館の移転を決めた。事業費が膨らむが、生涯学習課は「市議会や市民の意見を聞き検討を進めた。機能を充実させる」と説明している。

広島市立中央図書館
 1926年に開館した浅野図書館が前身。旧広島藩主の浅野長勲(ながこと)が私財を投じ、郷土に関する図書や記録を収集する図書館として建てた。原爆の被災から免れた和漢の古書などの「浅野文庫」や広島ゆかりの文学資料などを所蔵。市は整備地を巡り、市中央公園内にある現在地▽公園内での移転建て替え▽商業施設「エールエールA館」への移転―の3案を比較検討した上で、A館に決めた。

(2024年3月22日朝刊掲載)

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