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ブラジルの被爆者 森田隆さん100歳 在外援護に道 500人に祝われ喜び

 南米に暮らす被爆者を束ね、援護の道を切り開いてきた在ブラジル被爆者の森田隆さんが今月2日、100歳の誕生日を迎えた。森田さんの名を冠したサンパウロ南部のタカシモリタ州立工業高でお祝いの会が開かれ、元気な姿を見せた。

 解散したブラジル被爆者平和協会(前・在ブラジル原爆被爆者協会)で共に活動してきた被爆者たちから報告が届いた。会は同校が主催し1日に開かれた。生徒と教員を中心に500人以上が出席。被爆者仲間や州議会議員、森田さんのドキュメンタリーを撮影中の現地クルーも集い、にぎやかだったという。

 生徒たちが森田さんの半生を題材にした演劇や和太鼓演奏を披露。肖像画や折り鶴で作った花を贈られた森田さんは、笑顔でケーキのろうそくを吹き消した。

 森田さんは1945年8月6日、爆心地から約1・3キロの広島市山手町(現西区)で憲兵として防空壕(ごう)の仕上げ作業中に被爆。背中などに大やけどを負い急性症状にも苦しんだ。56年に家族でブラジルに移住し84年在ブラジル原爆被爆者協会を結成して会長に。サンパウロで食料品店を営みながら、移民として広大な南米に渡り後障害などの不安を抱えて暮らす被爆者を支えた。

 韓国や米国の被爆者とも連帯し、在外被爆者への被爆者援護法適用を求める運動を率いてきた。証言活動も続け、ブラジルの人々にヒバクシャの言葉を知らしめた。

 ブラジルに滞在し被爆者の研究を続ける東京外国語大大学院生相原由奈さん(29)は「生徒たちが森田さんを通して在ブラジル被爆者の体験を知り、思いを受け取って平和について考えている。若い世代につながっていると感じた」という。

 一昨年から施設で暮らす森田さん。元協会理事の渡辺淳子さん(81)は、「以前と比べ口数は少なくなったが、この日はとてもうれしそうな表情で良かった」と100歳を祝った。(森田裕美)

(2024年3月25日朝刊掲載)

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