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社説・コラム

『潮流』 WAR IS OVER!

■報道センター文化担当部長 道面雅量

 ベトナム戦争のさなか、1969年のクリスマスの頃。現代美術家オノ・ヨーコさんは夫のジョン・レノン(80年死去)と連名で、「WAR IS OVER!」と大書したメッセージボードを米ニューヨークなど世界各地の大都市の街頭に張り出した。

 メッセージは「IF YOU WANT IT」と続く。直訳すれば「戦争は終わり! あなたがそう望めば」といった感じになる。

 今、パレスチナ自治区ガザの戦禍は深まり、ウクライナでの戦争も続く。停戦を願う声が世界中で上がっているにもかかわらず。55年前のメッセージを現状と照らし合わせるとき、空想的な「お花畑平和主義」だ、おめでたいね、という印象を受けるかもしれない。

 ただ「WAR IS OVER」の「IS」は現在形で、未来形ではない。「あなたが戦争終結を心から願う、それこそがすなわち戦争の終わりに等しいのだ」―。無力感を退ける信念の必要を説き、今ここからの行動を促すメッセージとも読み込める。戦争に加担しないよう、政治の動きや企業の取引を注意深く見て、投票や消費の判断に生かすのも行動だ。

 「お花畑」でいえば、あのメッセージにも刺激されてベトナム反戦運動を引っ張った若者は「フラワーチルドレン」と呼ばれた。反戦運動の高まりが75年の戦争終結と無関係とみるのは、それこそおめでたい話だろう。

 文化担当に今春異動し、洗心のページの編集に関わっている。浄土真宗の教えを説く「歎異抄(たんにしょう)」には、念仏を唱えようとする「こころのおこるとき、すなわち」救いはすでに確かであり、「ただ信心を要とす」とある。あのメッセージと重なる気がする。不真面目だが私も門徒だ。

(2024年3月28日朝刊掲載)

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