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映画「オッペンハイマー」 広島の観客は ヒロシマへ関心高まる 被爆 描いてほしかった

 原爆開発者の葛藤を描き、米アカデミー賞の7部門を受賞したクリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」の国内での公開が29日、始まった。被爆地広島の映画館では被爆者や若者が早速鑑賞し、さまざまに受け止めた。

 映画は、マンハッタン計画を主導し「原爆の父」と呼ばれた物理学者オッペンハイマーの栄光と苦悩の半生をたどる。広島市中区の八丁座では初回の上映を84人が鑑賞。広島県被団協の佐久間邦彦理事長(79)は「オッペンハイマーは物理学者として市民への原爆投下の結果を分かっていたのになぜやめなかったのか」と唇をかんだ。

 原爆投下を正当化する米国の歴史観を踏襲した場面を振り返ったのは、南区の崇徳高1年久米叶恵さん(16)。「平和教育を受けてきた身としては複雑だけど、ヒロシマに関心が高まる良い機会になる」と感想を語った。

 国内公開前から指摘されていたのが、被爆の惨状が直接描かれていない点だ。佐伯区の沢田俊子さん(82)は「一瞬でもいいから入れてほしかった」。一方、東区の広島修道大1年金本凜周(りしゅう)さん(19)は「被爆地の間接的な表現はより印象的で怖さが伝わった。オッペンハイマーも戦争に巻き込まれ苦しんだ被害者だと感じた」と話した。(山下美波、仁科裕成)

(2024年3月30日朝刊掲載)

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