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教育勅語引用 市長講話 広島市職員研修 憲法前文も採用

 広島市の松井一実市長は8日、新規採用職員向けの研修で戦前の「教育勅語」の一部を引用した資料を使って講話した。市長就任翌年の2012年度から続けており、24年度は新たに憲法前文の一部も取り入れた。

 研修は非公開で中区のJMSアステールプラザであり、約300人が参加した。市が明らかにした資料は全22ページ分で、松井市長が監修し、市のまちづくりや財政について紹介している。

 うち「生きていく上での心の持ち方」の項目で「先輩が作り上げたもので良いものはしっかりと受け止め、また、後輩に繋(つな)ぐ事が重要」と記し、従来通り「爾(なんじ)臣民 兄弟に 友に」と博愛や公益を説く教育勅語の一部を引用。続けて、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」など平和主義と国際協調に触れた一節も掲載している。いずれも英訳がある。

 研修を終えた職員たちは中国新聞の取材に「いろいろな考えを知るのは大事だ」「戦争の悲惨さを伝える市が戦争のあった時期に使われた教育勅語を使うのは矛盾を感じる」「そもそも教育勅語がよく分からない」などと答えた。

 教育勅語の引用を巡っては複数の団体から中止を求める声が出ている。松井市長は3月の記者会見で「市民の間にいろんな意見があるのは事実。ちゃんと説明しながら使う」と述べていた。(野平慧一)

(2024年4月9日朝刊掲載)

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