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被爆バイオリンと平和の調べ 94歳祖母の恩師が所有 3世ピアニスト三原さん 6月中区で演奏会

 被爆3世のピアニスト三原有紀さん(33)=東京=が6月29日に広島市中区でコンサートを開き、ゆかりのある被爆バイオリンと共演する。被爆者の祖母霜子さん(94)=西区=は、バイオリンを所有していた元音楽教師で白系ロシア人被爆者の故セルゲイ・パルチコフさんの教え子だった。「世界に平和への思いを発信するスタートにしたい」と意気込む。(山下美波)

 コンサートは中区本川町のWAKOゲバントホールで午後2時に開演。三原さんがピアノを、廿日市市育ちで桐朋女子高音楽科3年安塚かのんさん(17)=東京=が被爆バイオリンを弾き、ドビュッシーの「バイオリンソナタ」などを披露する。

 共演を望んだのは霜子さんだった。広島女学院高等女学部(現広島女学院中高、中区)に入学後、ロシア革命を逃れて日本へ亡命し、同校で音楽教師をしていたパルチコフさんにバイオリンを習った。「毎日レッスンがあった。優しいけれど、基礎をみっちり指導された」と振り返る。

 パルチコフさんは爆心地から約2・5キロの今の東区牛田旭にあった自宅で被爆。壊れた家屋からバイオリンを探し出した。1969年に亡くなった後、遺族が広島女学院へ寄贈。霜子さんは2022年、演奏会で安塚さんが奏でるその音色に触れたという。

 三原さんは、学徒動員中に比治山(現南区)で被爆した霜子さんの体験を幼少期から聞いてきた。かねて「音楽の素晴らしさだけでなく、メッセージを残せるピアニストになりたい」と考え、祖母の願いをかなえた。安塚さんも「被爆バイオリンはぬくもりがあり、パルチコフ先生が宿っているよう。平和を伝えるのが自分の使命」と話している。

 コンサートは一般3千円、18歳以下千円。売り上げの一部を被爆バイオリン保存のため広島女学院に寄付する。購入はチケットサイトか、安塚さんの母綾子さんlivarayako@gmail.com

(2024年4月11日朝刊掲載)

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