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日米連携重要性を強調 首相、米議会で演説 上下両院会議 「核なき世界」協力求めず

 国賓待遇で訪米中の岸田文雄首相は11日午前(日本時間12日未明)、米連邦議会上下両院合同会議で演説した。中国の台頭や気候変動、人工知能(AI)の進歩など世界情勢の変化に対応するための日米両国の連携の重要性を強調。被爆地広島選出の首相として「核兵器のない世界」に言及したものの、具体的な協力は呼びかけなかった。(ワシントン発 秋吉正哉)

 「未来に向けて われわれのグローバル・パートナーシップ」と題し、英語で話した。小学校時代に米国で暮らした経験に触れ、米国を「戦後の国際秩序を形づくった」と称賛。現在は、気候変動による災害やAIの悪用の危険、中国の「これまでにない最大の戦略的挑戦」から国際秩序を守ることが課題と述べた。

 日米同盟の中での日本の立場については、防衛予算の増額や北大西洋条約機構(NATO)との協力を踏まえて「第2次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、コミット(関与)した同盟国へ自らを変革してきた」と表現。「日本は米国と共にある」と語り、自身が日米同盟の強化に「先頭に立って取り組んできた」とも唱えた。

 「核なき世界」の実現に向けては「自身の政治キャリアをささげてきた」と訴えた。核開発を続ける北朝鮮、ウクライナに侵攻し核戦力を誇示するロシアを「核兵器拡散の差し迫った危険」と批判した。ただ核超大国の議員を前に、具体的な核軍縮への協力を呼びかけることはなかった。

 経済面では「日本は世界最大の対米直接投資国だ。日本企業は約8千億ドルを投資し、米国内で約100万人の雇用を創出している」とアピール。「成長志向の日本経済は、米国へのさらなる投資にも拍車をかける」と説いた。

 日本の首相による米議会での演説は5人目。このうち上下両院合同会議での演説は、2015年の安倍晋三氏に続き2人目だった。

対中朝 対話を促進 共同会見

 岸田文雄首相は10日(日本時間11日)、米ワシントンのホワイトハウスでのバイデン大統領との会談に続き、共同記者会見に臨んだ。海洋進出を図る中国や核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を念頭に、安全保障面での協力を強調。「グローバルなパートナーとして真価を発揮すべき時だ」と語り、世界の課題に共に対応する姿勢を示した。(ワシントン発 秋吉正哉)

 会見で両首脳は、国際社会の緊張が強まっているとし、防衛や経済分野での結びつきを強める方向性を打ち出した。首相は「反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛予算の引き上げなどに取り組んでいると伝え、あらためて強い支持を得た」と力を込めた。

 中国や北朝鮮との対話に努める考えも示した。首相は「北朝鮮との首脳会談を実現すべく、私直轄でのハイレベルの協議を進めていく」と説明。バイデン氏は「対話の機会を歓迎する」と話すなど、日朝首脳会談への支持を表明した。

 共同声明で触れられた「核兵器のない世界」に向けては、首相が「核軍縮に関する現実的、実践的な取り組みの進展を確認した」と述べた。バイデン氏も「核の不拡散を国連で訴えた」と首相を持ち上げた。

 会談は両首脳と上川陽子外相、ブリンケン国務長官らで約30分、続けて人数を増やして約55分と計1時間25分に及んだ。後半に加わった村井英樹官房副長官によると、バイデン氏は終盤に「日本以上に重要な同盟国はない」と話し、名残惜しい様子だったという。

(2024年4月12日朝刊掲載)

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