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高揚感一転 課題山積み 首相 国賓待遇訪米から帰国 裏金…島根1区 苦境

 岸田文雄首相は国賓待遇での公式訪米から帰国した。日米首脳会談や米議会での演説を通じ「蜜月関係」をアピール。国内では珍しい高揚感を漂わせる場面も目立った。ただ早速、自民党派閥の裏金事件などで苦境が伝わる衆院島根1区補欠選挙が16日に告示され、課題山積の内政に向き合う。政権運営の難局は当面続きそうだ。

 「日米がグローバルなパートナーとしていかなる未来を次の世代に残そうとしているか。伝えることができた」。首相は帰国前の13日、報道陣に訪米の意義を強調した。

 米国との「パートナーシップ」がうかがえたのは防衛や経済分野だった。自衛隊と在日米軍の連携強化や英国、オーストラリア、フィリピンを含めた安全保障態勢の構築、半導体など先端分野での協力…。バイデン大統領は11日の首脳会談後「日米の結束が再確認された」と歓迎した。

 首相は民主党のバイデン氏と共和党のトランプ前大統領が争う秋の大統領選も見据えた。12日の議会演説では、バイデン氏が重視するウクライナ支援とともに、日本企業による米国内での投資をPR。「(対米投資は)党派を超えた共通認識として広がっている」と語り、共和党側への配慮をにじませた。

 ただ持論の「核兵器のない世界」への発信は踏み込み不足だった。演説で言及はしたものの、実現への道筋は示さなかった。ある外務省幹部は「売り手が横柄だったら(主張を)買ってもらえない」と核超大国への発信の難しさを吐露した。

 昨年5月の広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)では開催後に内閣支持率が上昇した。今回も一部報道機関の世論調査で支持率が上向いたが、直面する国内政治の状況を考えると低空飛行を脱するまでの流れになるかは不透明だ。

 当面は16日告示の衆院3補選が焦点になる。自民党は東京15区、長崎3区で独自候補を擁立せず、公認候補を出す島根1区でも苦戦が伝わる。

 「自民王国」とされる島根での勝敗は政権の行方を左右する。訪米中、島根1区の結果次第で自身にどう責任が及ぶかを問われた首相は「今は政治の信頼回復、経済、震災対応をはじめとする課題に専念し、実行力を訴えていくのみだ」と話した。(秋吉正哉)

(2024年4月16日朝刊掲載)

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