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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 耳に残る子どもの言葉

 「お、いいわ」―。今は保育園年長組の長男が確か2歳の頃、一日に何度もそう言って大笑いする時期があった。何かと思えば、漫才の締めの言葉「もうええわ」のまね。保育園で知り、なぜか気に入ったのだ。

 わが子が成長に応じて話す言葉は大切な思い出だ。それだけに、被爆当時の幼児の言葉はわがことのように胸に迫る。

 「火がちたよー ててが焼けるよー」。ある父親は、家の下敷きになって助けられなかった2歳の娘の最後の叫びを手記にこう書いていた。ある被爆者の男性は「幼い妹が『もうくうずきん』(防空頭巾)と言うのが忘れられん」と話していた。

 きのこ雲の下にいた幼児の言葉。本人が命を奪われ、あるいは幼くて記憶になくても家族の手記や証言に刻まれている。つらいが、その声に向き合いたい。(編集委員室・水川恭輔)

(2024年4月16日朝刊掲載)

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