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広島市長に請願書 在ブラジル被爆者 地元治療求める

 ブラジル・バストス市在住の被爆者向井春治さん(72)が二十四日、「在ブラジル被爆者裁判を支援する会」(代表・田村和之広島大教授)の招きで、広島市を訪れた。三十一日、国と広島県を相手取り、被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給を求めて広島地裁に提訴する。

 向井さんはこの日朝、市役所で、中区舟入本町のポンプ工場でともに学徒動員中に被爆した同級生二人と再会。守田貞夫社会局長を訪ね、「地元ブラジルでの健診、治療を」と求める在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)の秋葉忠利市長あて請願書を提出した。

 向井さんはさらに、市原爆被害対策部で、九九年八月の日本出国と同時に失効した被爆者健康手帳と健康管理手当の再交付手続きを済ませ、安佐南区内の病院に入院した。今月末まで検査を受ける。三十一日の提訴の後、八月六日まで、市民団体などの集会に参加し、ブラジルの被爆者の実態を訴える。

 向井さんは訴因である九九年の手帳交付の際、当時の滞在先を東広島市内としていたため、提訴は国と広島県が相手。同年八月以降打ち切られた健康管理手当の支給などを求める。弁護団によると、向井さんを含めブラジルの被爆者五~七人が同時に提訴予定という。

 向井さんは「原爆で親も財産もなくし、国の政策に沿ってブラジルに渡った。原爆の後障害にも悩まされている。日本にいる被爆者と同様に扱ってほしい。それ以上は望んでいない」と話した。

(2002年7月25日朝刊掲載)

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