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在外被爆者の医療費補助 広島市検討 渡日支援の代替策

 広島市が、在外被爆者に対する新たな支援策として、現地での医療費を補助する事業を検討していることが一日、分かった。広島、長崎四県市が実施主体となって七月に始めた国の在外被爆者支援事業は、被爆者健康手帳取得のための渡航費補助など「日本国内での支援」が中心。自国での治療を願う在外被爆者が反発、事業が行き詰まっているため、市は打開策として実現可能性を探る。

 市は、厚生労働省から「広島、長崎の四県市で在外被爆者支援の具体策についてアイデアを出してほしい」と打診された経過を踏まえて検討。日本国内の被爆者への医療費給付に準じる形で、在外被爆者が現地で使った医療費の自己負担分を補助する案が浮上した。

 市は各国の医療実態の調査を進め、盆明けにも広島県や長崎県市との協議を始める。案がまとまれば、国との折衝に入る意向。広島県と長崎県市には既に概略を文書で通知し、広島県は「事業が進まない以上、新たな方策の研究が必要」と市の提案を前向きに受け止める姿勢を示している。

 国の支援事業は、手帳取得のための来日、滞在費助成や、渡日治療の渡航費補助などが柱。うち手帳交付は本年度七百四十七人、向こう三年間で約二千八百人を見込み、本年度は国が五億円の総事業費を計上している。

 しかし、在ブラジル原爆被爆者協会と米国原爆被爆者協会はそれぞれ、医療基金の拠出を要望。被爆者が約二千人と最も多い韓国原爆被害者協会も賛否を留保している。事業開始から一カ月を経た現在、来日のめどが立った手帳申請者は四県市で韓国などの数人にとどまっている。

 ただ、国は「医療や経済水準が国によって異なり、各国平等の支援は難しい」として日本国内に限った支援を強調してきた経緯もある。この一カ月間の状況について厚労省健康局総務課は「何とも言えない。しばらく様子を見たい」としている。

(2002年8月2日朝刊掲載)

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