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緑地帯 佐藤正治 音楽のミューズとともに⑧

 2月、88歳で亡くなった指揮者の小澤征爾は若いころ「日本人に西洋音楽がわかるのか?」と何度も質問されたという。国内外で多くの日本人音楽家が活躍するようになった今、この質問が出ることはない。それどころか、日本人の演奏を聴くため、クラシック音楽ファンが来日する現象も起きている。

 北米在住者向けのある音楽ツアーは、これまでザルツブルクやバイロイトなど世界的な音楽祭を訪れていた。だが6年前、新国立劇場のオペラや、Bunkamuraオーチャードホールの東京フィルハーモニー交響楽団によるコンサートなども、ツアーに加えた。近年、日本のホールは音響が素晴らしく、海外からも絶賛されている。友人は、ウィーンフィルの楽団員に「日本は良い音のするホールの宝庫だよ」と言われたという。同時に、国内のオーケストラの演奏力も格段に向上している。

 私は、日本の音楽ホールとオケを強力な観光資源と位置付けたい。そのためには、海外の聴衆をもっと引き付ける努力が必要だ。観光庁や文化庁、自治体が一丸となって海外から聴衆を呼び込めば、確実に経済効果はホールの外にも広がるはずだ。

 国際平和文化都市広島に新しいホールが建設されれば、必ずや世界的に知られる新名所となるだろう。素晴らしいホールと広島交響楽団が、地域の観光資源や経済効果を生み出す。決して夢物語ではない、と信じている。(KAJIMOTOプロジェクト・アドバイザー=東京) =おわり

(2024年4月19日朝刊掲載)

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