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核軍縮 日本の評価低下 23年ひろしまレポートで3年ぶり 国連決議の棄権要因

 核兵器廃絶を目指す広島県主導の官民組織「へいわ創造機構ひろしま(HOPe)」は19日、核兵器に関する34カ国の2023年の取り組みを採点した「ひろしまレポート」を公表した。日本は同年5月に広島市であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)を主導したものの核軍縮分野の評価を3年ぶりに下げた。ウクライナへの侵攻を続ける核保有国のロシアも評価を大幅に落とした。(太田香)

 評価の対象は核兵器保有五大国、事実上保有する4カ国、非保有の25カ国。委託先のシンクタンク「日本国際問題研究所」(東京)が核軍縮▽核不拡散▽核物質の安全管理―の3分野78項目で採点し、満点に対する割合を評点率で示した。

 レポートは、サミットで採択した初の核軍縮文書「広島ビジョン」に関し「国際社会がとるべき行動・措置を包括的に提示した」と評価した。一方で「核兵器の存在および核抑止を肯定するものだとの強い批判もみられた」との説明も加えた。

 核軍縮分野の評点率は日本が57・3%で前年比1・0ポイント下落。広島ビジョンは加点対象だったが、国連総会での核軍縮決議の採択を棄権したとして評価を落とした。

 ロシアは9・5ポイント減のマイナス5・9%。ウクライナ侵攻で「核のどう喝」を繰り返したと指摘し、新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止や包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回したことで「既存の核軍縮条約の存続可能性に大きな懸念を与えた」とした。

 核保有国はいずれも「核抑止力の重要性を強め核戦力の近代化を進めている」と指摘。特に中国の急速な核戦力の増強への懸念を示し、米英仏ロを含む核保有五大国の評価を軒並み下げた。米国と同盟関係にある日本など非保有国も「拡大核抑止を重視している」と言及した。

 事実上保有する4カ国のうちイスラエルは2・4ポイント減のマイナス3・3%。同国の閣僚がパレスチナ自治区ガザへの核攻撃を示唆する発言をしたことを踏まえた。ミサイル発射実験を繰り返した北朝鮮は5・6ポイント減のマイナス11・3%で全対象国の中で最低だった。

 レポートは13年から毎年公表している。記者会見したHOPe代表の湯崎英彦知事は「核兵器を強化したいという世論が巻き起こる中、G7首脳が廃絶の方向を目指すと一致して訴えたことが大きなブレーキになった」と、あらためて広島サミットの意義を強調した。

(2024年4月20日朝刊掲載)

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