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被爆体験証言者 最少32人 10年で12人減 平均年齢86.5歳 92歳才木さんら新たに

 広島市の「被爆体験証言者」として本年度活動する被爆者は32人で、過去10年で最少となった。昨年度に2人が亡くなり、1人が高齢を理由に退いた。平均年齢は86・5歳。新たに加わる2人は、来年の被爆80年を前に次代への記憶の継承を誓った。(山下美波)

 証言者は81~94歳で、10年前に比べて12人減。23日に原爆資料館(中区)で、広島平和文化センターの香川剛広理事長から委嘱書を受け取った。今後、資料館や派遣先の学校で被爆体験や平和への思いを語る。昨年度は1578回で計11万320人に伝えた。

 新たな証言者の一人で、広島一中(現国泰寺高)2年の時に被爆した才木幹夫さん(92)=中区=は1年間の研修を経て任命された。24日の初講話を前に「生きている後ろめたさがずっとあった。ロシアのウクライナ侵攻もあり、核使用は絶対にあってはならないと伝えたい」と力を込めた。

 また、被爆者の記憶を受け継ぐ子や孫たち「家族伝承者」22人と、第三者の「被爆体験伝承者」19人も新たに任命された。被爆体験伝承者として母の記憶を語り継ぎ、本年度から家族伝承者にもなった東野真里子さん(71)=安佐南区=は「活動の場が広がる。より多くの人に伝えたい」と決意した。

 証言者と伝承者は従来1年更新だったが今回から任命期間が無期限になる。

最年少20歳 「伝承」に情熱 安田女子大3年増本さん

 安田女子大3年の増本夏海さん(20)=広島市安佐南区=が本年度、被爆体験伝承者として活動を始める。学業の傍ら2年間の研修を積み、過去最年少での任命となった。「被爆体験を聞くことが少ない県外にも出向き、47都道府県で講話をしたい」と意気込んでいる。

 小学生の頃から平和学習を通して「ヒロシマ」に関心を深めた。大学入学時に母親の勧めで伝承者研修への参加を決めた。「平和は願っていても実現しない。行動しないと」。大学の授業やアルバイトをこなしながら、月1回のミーティングを通し、被爆者の岸田弘子さん(84)=佐伯区=の記憶を受け継いだ。

 卒業後は小学校教諭を目指しており「子どもたちにも伝えたい」と見据える。23日に原爆資料館(中区)で委嘱書を受け取る様子を見届けた岸田さんは「会うたびに質問をたくさんしてくれ、平和や命に対する情熱を感じた。安心してつなげて幸せ」と喜んだ。(山下美波)

(2024年4月24日朝刊掲載)

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