×

連載・特集

2024FF 祭典の力 <下> 平和を願って

戦火 被爆地で思い共有

 広島市中心部で5月3~5日に開かれるひろしまフラワーフェスティバル(FF)への出展は、前身の団体も合わせると20回以上になる。パレスチナの刺しゅう作品を販売し、暮らしを伝える市民団体「サラーム」にとってFFは恒例行事。しかし、ことしは特別な思いで迎える。

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が昨年10月に始まり、半年余り続く。3年前まで現地で四半世紀を過ごした中心メンバーの水本敏子さん(65)=中区=は「小さい子でも被爆地を知っている。広島側も、紛争と不自由の中で暮らす人たちをもっと知ってほしい」と思いを募らせる。

 FFでは平和大通り(中区)沿いの「ひろば」で、花や星といった伝統模様を施したポーチやリュックなど約100点を並べる。ヨルダン川西岸の自治区に暮らす女性たちの手作り。メンバーは現地の地図などを示し、多くの村が封鎖され、職を失う人が増えている状況なども紹介する。

 長年参加するメンバーの黒河恵子さん(62)=南区=は「来場者の質問に答えながら私たちも学んでいった。地道に続けることで関心は高まっていく」と確信する。

 戦火はロシア軍が侵攻したウクライナでも続く。FFの実行委員会は、現地から逃れて広島市で歌手活動するヤナ・ヤノブスカさん(42)のため4日のカーネーションステージを用意した。

 2年前の侵攻直後、長女ゾリアナ・ヒブリチさん(21)と共にキーウ(キエフ)の自宅を離れ、知人を頼り広島へたどり着いた。帰国の見通しは今も立たない。それでも昨年、歌手活動を再開し、一歩ずつ踏み出している。

 被爆地から生まれたFF。その存在を初めて知ったヤノブスカさんは「花に平和の願いを込める祭典は、ウクライナにも必要なコンセプト。広島とは通じ合うものがある」と共感する。4日は親子でステージに立ち、母国のポップソングなどを歌う予定だ。

 ヤノブスカさんは「どうかウクライナと共にいてほしい。私と一緒に歌い、音楽を奏でる友になって」と呼びかける。「平和の花の祭典」が希望を広げてくれると信じている。(神田真臣)

(2024年4月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ