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平和と復興 歌に乗せ 願う 2024ひろしまFF

 祈り、歓喜、情熱…。出演者の懸ける思いが会場を一つにした。2024ひろしまフラワーフェスティバル(FF)2日目の4日。会場になった広島市中区の平和大通り一帯ではアスリートが特設トラックで躍動し、戦火の母国から避難した親子は歌声を響かせた。地元音楽隊の演奏や、高校生の即興生け花に手拍子や声援が送られた。

ウクライナから避難の親子 「日本で希望もらった」

 ロシアによるウクライナ侵攻から2年2カ月。広島市で避難生活を続ける歌手のヤナ・ヤノブスカさん(42)と、長女のゾリアナ・ヒブリチさん(21)親子が初めてFFの舞台に立った。戦火が続く母国を案じながらも、平和を願って歌う喜びをかみしめた。

 2人は赤の刺しゅうが入った民族衣装に身を包み、手をつないでカーネーションステージに登場した。息の合った歌声で、ウクライナのポップソングなど5曲を披露した。ヤノブスカさんは、松田聖子さんの「あなたに逢いたくて~Missing You~」も日本語で熱唱し、観衆は静かに聞き入った。

 曲の合間には日本語を交えながら、現在の思いを吐露する場面もあった。来日後の不安や母国に残る家族について伝え、「皆さんの手で平和を守って」と訴えた。

 親子に日本語を教えてきた講師の舛本美穂さん(49)も会場で見守った。「2人にとって今日は大きな一歩。このような機会が増え、活動の場が広がるきっかけになってほしい」と願った。

 歌い終えたヤノブスカさんは「絶望の中から日本で生きる希望をもらい、自分の国にも将来があると思えた」。これからも、歌でつながる人たちと希望を紡いでいくつもりだ。(山本真帆、平田智士)

第九 能登に届け 音楽隊や市民

 不思議な力が、私たちを再び結びつける―。そんな歌詞の通りに会場に一体感が生まれた。カーネーションステージで4日、披露されたベートーベンの交響曲第9番の「歓喜の歌」。地元の3音楽隊と市民、学生の有志が演奏と合唱を担い、観衆とともに能登半島地震の被災地へエールを送った。

 広島市消防音楽隊と広島県警音楽隊、陸上自衛隊第13音楽隊の計約90人が力強い音色を奏で、市民やエリザベト音楽大(中区)の学生たち計約50人が高らかに歌い上げた。同大2年の工藤愛太さん(20)は「声を合わせて遠くまで届くように」と力を込めた。

 終了後、観衆から「ブラボー」の声が上がり、ステージは大きな拍手に包まれた。トロンボーンを担当する次男を見守った東広島市の会社員望戸(もうこ)政貴さん(59)は「音や歌声の力を改めて感じた」と感動していた。

 人々の結び付きをテーマに世界中で歌い継がれている「第九」。だからこそ大勢が集うFFでの披露を考えた。タクトを振った広島市消防音楽隊の栗原剛楽長(69)は「人の痛みを知り、思いやることが大切。その気持ちが被災地や不安定な世の中に伝わったら」と願った。(平田智士)

STU「思い一つに」

 アイドルグループSTU48のメンバー16人がカーネーションステージに登場し、平和を願うメッセージソングなど7曲を披露した。力強い歌声と息の合ったダンスに、会場は熱気に包まれた。

 オープニングを飾ったのは、荒れ地に咲く花を巡る争いを題材にした「花は誰のもの?」。水色と白の衣装を身にまとったメンバーたちが「もしこの世界から国境が消えたら/争うことなんかなくなるのに」などのフレーズを熱唱し、舞台いっぱいに跳びはねた。曲間のトークで「FF出演は大きな出来事」などと喜び合い、観衆約5千人が拍手を送った。

 終演後、広島県出身でキャプテンの岡田あずみさん(21)は「舞台から国内外の人の笑顔が見えた。歌で思いが一つになればうれしい」と語った。(木原由維)

(2024年5月5日朝刊掲載)

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