×

社説・コラム

『ひと・とき』 カトリック広島司教区司教 白浜満さん 核なき世界へ 宗教界から声

 「核大国の中でも核兵器の非人道性を訴える人が増えつつある。この動きを加速させたい」。米国のカトリック系平和団体の巡礼団が3月、自国による原爆投下を市民の立場から謝罪するため、広島市を訪れて被爆者団体の代表者たちと面会した。地元の司教として、準備や被爆者団体との調整に奔走した。

 長崎県出身だが、核兵器廃絶に向けた活動に本格的に携わるようになったのは、2016年に広島司教区に着任したのがきっかけだった。

 当初は被爆地の司教として何ができるのか、頭を悩ませていた。道を示してくれたのが19年に広島を訪問したローマ教皇フランシスコだった。平和記念公園(中区)でのスピーチで「核兵器を保有すること自体が倫理に反する」と踏み込んだ。

 「カトリック教会のトップが核兵器廃絶の必要性を明言された。私自身もためらうことなく行動できるようになった」と振り返る。翌20年に長崎大司教区などと共同で、平和運動を後押しする「核なき世界基金」を立ち上げた。

 現在も世界各地で戦火が続く。「核兵器が使用されないか心配される今だからこそ、平和に向けて被爆地から声を上げ続ける」と誓う。(山田祐)

(2024年5月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ