×

社説・コラム

天風録 『ガザの「ホロコースト」』

 並んだ遺体を前に声を上げて泣く人々、傷ついた母親のおなかから何とか救い出された胎児、うつろな目で飢餓にあえぐ子ども…。目を覆いたくなる光景を伝える映像や記事がパレスチナ自治区ガザから届き始めて7カ月▲イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続き、子どもを含む市民ら3万4千人以上が犠牲となった。この非人道的な状況を世界に発信しようと、現地で取材しているジャーナリストもまた大勢が命を落としている▲ガザ情勢を伝える全ての記者にピュリツァー賞特別賞が贈られた。「悲惨な状況下での勇敢な功績」と称賛して。命懸けの報道が世界を動かしつつある。イスラエルを支援する米国では反政府デモが相次ぐ▲休戦案をハマスが受け入れてガザの人々の喜ぶ姿が伝えられる。地獄の日々が終わるという安心と悲しみをかみしめる。ところがイスラエルは不満らしい。都市への空爆や侵攻を続ける▲きょうは第2次世界大戦で欧州の戦争が終わった日。ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の実態が分かり世界に衝撃を与えた。今度はユダヤ国家がパレスチナで虐殺を進めるのか。痛みや悲しみの記憶はどこへ。もうやめよ。

(2024年5月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ