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社説・コラム

『潮流』 政治にはカネがかかる?

■編集委員室長 荒木紀貴

 自民党の「政治とカネ」の問題を取材していると、党側からこの言葉をよく聞かされる。「そうはいっても、政治にはカネがかかるんですよ」

 自民党で長年、事務局長を務めた久米晃氏(70)もそうだった。派閥の裏金事件の感想を尋ねると久米氏は開口一番、同じ言葉を口にした。

 地方選出の衆院議員は選挙区が広い。地元とのつながりを深めるには複数の事務所が要る。それぞれに秘書を雇い、家賃がかかる。チラシなどの広報宣伝費もかさむ。

 話は選挙にも及んだ。激戦区になると、党幹部が応援に入る。その際には陣中見舞いを持って行く。100万円を包むことが多く「表に出ないカネ」を使うという。使途を明らかにしなくていい政策活動費である。事実上の裏金と指摘されるが、適法でもある。

 候補者が受け取る100万円の使途を尋ねると久米氏は「必要なことに使っている。英国製の背広を着て、高級車に乗っている議員もいるけど、それは限られた人」と即答。「当選するために、お金でできることはする。戦だから勝たないと仕方ない」と強調した。

 選挙を念頭に地元活動に力を注ぎ、地域に根を張る地方議員との関係を構築。選挙となれば、表に出ないカネも投入して当選を引き寄せる―。これが自民党選挙の神髄だとあらためて感じた。政治にカネがかかるという主張を全否定はしないが、「選挙に勝つためにカネをかけている」とも映る。政治資金の透明化は後回しにされている。

 国会では今後、政治資金の透明化が焦点となる。実効性のある法改正ができるのか。「政治にはカネがかかる」という言葉に惑わされず、各党の動きを見つめたい。

(2024年5月9日朝刊掲載)

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