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米が臨界前核実験計画 今年と来年の各前半

 米国が2024年前半と25年前半に西部ネバダ州の核実験場内にある地下施設で臨界前核実験を計画していることが、11日までに分かった。米保有核を管理するエネルギー省核安全保障局(NNSA)が中国新聞の取材に回答した。バイデン政権発足から8カ月後だった21年9月以来となる。

 NNSAは昨年、「24年に2回実施」の方針を公表していた。臨界前核実験の動向を追っているNPO法人ピースデポ(横浜市)の梅林宏道特別顧問(86)は「市民が絶えず監視し反対し続けることが、爆発を伴う核実験の再開に至ることを許さず、核兵器なき世界への世論を強めるために重要」と指摘する。

 梅林さんはNNSAが1997年以降の実施回数を計33回としていることを情報公開請求で確認し、4月に公表している。

 NNSAは2020年代末までに実施可能な頻度を増やそうと、実験施設の増強に予算を投じている。核弾頭の中枢部分「プルトニウム・ピット」の経年変化が核抑止力の低下につながると懸念。ピット製造能力の維持などと併せ、臨界前核実験を「爆発を伴う核実験をせずに核兵器の安全性や有効性を維持する上で重要」と位置付ける。

 だが「プルトニウムの劣化は非常に緩やか」などと反論する米国内の専門家は多い。米国は、爆発実験を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)に批准していない。

 広島市と広島県は臨界前核実験の実施が判明するたび、それぞれ市長名と知事名で米大統領に抗議文を送っているが、日本政府は「CTBTに違反しない」として抗議していない。現在、ロシアも北極圏ノバヤゼムリャ島で実施準備を進めている可能性があると指摘されている。(小林可奈)

臨界前核実験
 核弾頭の性能や安全性の評価、改良を目的とする実験の一つ。核分裂の連鎖反応が続く「臨界」に達しない量のプルトニウムなど核物質に、高性能火薬の爆発で衝撃を与え、反応を調べる。核爆発は伴わず、包括的核実験禁止条約(CTBT)に抵触しないが条約の精神に反するとの批判もある。

(2024年5月12日朝刊掲載)

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