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連載・特集

緑地帯 西元俊典 地域発 総合出版社⑤

 自治体や書店、放送局と共同で書籍化をする「コラボ出版」も多い。2016年9月には、庄原市と共同で「日本誕生の女神 伊邪那美(いざなみ)が眠る比婆の山」を刊行した。「古事記」にある国生みの女神・伊邪那美命が葬られていると伝わる「御陵(ごりょう)」(比婆山)の魅力を探る本である。

 古事記研究の第一人者である三浦佑之氏をはじめ、自然・歴史・文化・神話伝説など各分野の専門家22人が多角的な視点から執筆。高度な内容を一般向けのやさしい表現にして、中高生でも読めるようにした。

 広島、島根、鳥取の3県にまたがる広大な比婆山信仰圏は、神話、たたら製鉄、刀剣など日本の宝が集積する地域である。自治体の多様なリソースを活用したことで中身が濃くなった。ガイドブック的な機能を持たせた本書は、増刷となった。

 また、書店と連携して地域の書き手の発掘にも取り組んだ。活字文化の発展に貢献しようと書店チェーンの廣文館と連携して、自費出版のサポートを始めた。「本の目利き」である書店員が装丁や原稿について助言する珍しい取り組みだ。出版したい人々から反響があり、これまでに小説や句集、歴史物など十数点を刊行している。元塾講師が勉強法の極意を書いた原稿は際立った面白さがあり、当社で商業出版に踏み切った。

 人気テレビ・ラジオ番組の書籍化は、新しい読者層の開拓や新たな企画のヒントにつながった。(南々社代表=広島市)

(2024年5月14日朝刊掲載)

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