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米が臨界前核実験【解説】「核兵器なき世界」お題目か

 通算34回目となる米国の臨界前核実験は、永続的な核保有が米政府の根本路線である現実を改めて被爆地に突きつけた。バイデン大統領は1年前、先進7カ国首脳会議(G7サミット)で核軍縮文書「広島ビジョン」に合意したが、かろうじて記されていた「核兵器のない世界という究極の目標」すらお題目だったといえる。

 米国は、核兵器を「安全」に維持管理できていることや、核使用の際に想定通り作動することについて確信を得るため、臨界前実験など多種多様な実験を行っている。事実上、核兵器の近代化を支えており核軍縮に水を差すとの批判がある。

 ただ、臨界前実験は核爆発を伴わず、包括的核実験禁止条約(CTBT、未発効)に抵触しない。「地下核実験を再開させないための必要悪」との意見も根強い。米国は2020年代末までに実施頻度を上げる方針だ。

 結局、核抑止依存を否定しない限り臨界前核実験は続くだろう。その米核抑止への依存政策を堅持しているのが、ほかならぬ日本政府だ。被爆地からの声をよそに、政府は「CTBTに違反しない」として米国の臨界前核実験に抗議しない。ロシアも臨界前核実験をする可能性があると指摘されているが、政府は静観するのだろうか。

 21年に発効した核兵器禁止条約は、前文であらゆる国の核抑止依存や、核兵器近代化への動きを懸念し、爆発を含めた核実験を禁止しているとされる。「核兵器のない世界」をお題目にしないというのなら、あらゆる実験に反対し、やめさせるのは基本中の基本である。(金崎由美)

(2024年5月18日朝刊掲載)

米が臨界前核実験 14日 バイデン政権3回目

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