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オスロで被爆証言 手応え 広島の森下弘さん帰国 市民と交流 「核問題 関心高く」

 広島市佐伯区の被爆者森下弘(ひろむ)さん(93)がこのほど、赤十字国際委員会(ICRC)などの招きで訪れていたノルウェー・オスロから帰国した。現地では市民と精力的に交流し、被爆証言を重ねた。「核兵器に安全保障を頼る動きが北欧にも広がる中、体験をじかに話せて良かった。被害の実態が伝わったと思う」と手応えを語り、今後の発信にも意欲を燃やす。

 森下さんは先月下旬から8日間の日程で渡欧。ICRCなどが核の非人道性をテーマに開いた200人規模の催しで、科学者や医療者の討議の場に登壇した。滞在中、現地の若者が企画した交流会にも出席した。

 いずれの場でも14歳の時に現中区で被爆し、大やけどを負った体験を証言。顔の傷痕に苦悩した戦後にも触れ、核廃絶を訴えた。「ウクライナ危機を受けて、現地では核問題への関心が高まっていると感じた」と森下さん。来場者からは共感の声が相次いだという。

 ノルウェーは米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。ロシアのウクライナ侵攻後、近隣のフィンランドやスウェーデンも加わった。森下さんは「北欧も核依存を強めている」と危惧し、約20年ぶりとなる今回の渡航を決めたのだという。「核なき平和が実現し、被爆者の役割がなくなってほしいが、道半ばだ。老体を引きずってでも訴え続けなければ」と話している。(田中美千子)

(2024年5月20日朝刊掲載)

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