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森宗さん「広島らしさに磨き」 市映像文化ライブラリー専門官に着任 経験とネットワーク 再整備へ生かす

 広島市映像文化ライブラリー(中区)の映像文化専門官に今春、国立映画アーカイブ(東京)で特定研究員を務めた森宗厚子さん(51)が着任した。2026年に予定するライブラリーの移転再整備を見据えた業務拡充に対応する。「原爆・平和のフィルムアーカイブとしての理念を大切に、広島らしさに磨きをかけたい」と抱負を語る。

 森宗さんは京都市出身。ミニシアター運営や映画宣伝、映画専門書籍の編集、映画祭運営を長年手がけ、川崎市市民ミュージアムや国際交流基金にも勤務。前任地では、1920年後半の日活時代劇の脚本家林義子をはじめ、埋もれた女性映画人に光を当てた。

 広島市立中央図書館に隣接し、82年に設立された市映像文化ライブラリー。ホール上映可能な所蔵フィルムは、35ミリを中心に約780本に上る。昨年度は今井正監督、栗原小巻主演の「ひめゆりの塔」(82年)など8作品を購入した。「新規のフィルム収集と活用を地道に続けてきた意義と蓄積は大きい。市民の共有財産として誇りに感じてもらえるよう取り組みたい」

 90年から専門職を務めるベテランの佐藤武さん(64)とともに、毎月の上映プログラム編成などに取り組む。佐藤さんも「豊かな経験と幅広いネットワークを生かしてほしい」とエールを送る。

 移転先に予定されるJR広島駅南口のエールエールA館(南区)には、現在はない低温収蔵庫が整備されることになっている。森宗さんは「フィルムの収集、保存、活用というアーカイブの基本を大切に守りたい。国内外から情報を収集し、専門性を高める好機になれば」と受け止める。

 「映画は、現代と過去と未来をつなぐもの。美術館の美術品と同じく、スクリーンの中に存在する作品」と説く。コンテンツとして情報を消費するのではなく、鑑賞体験としての映画を楽しんでもらえる環境づくりへ意気込みを見せる。(渡辺敬子)

(2024年5月18日朝刊掲載)

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