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被爆証言 仏語に翻訳 仏大学生 ノエールさんとアラールさん 母国に「核兵器の悪影響伝える」

 フランスのロレーヌ大3年のマキシム・ノエールさん(21)とエドリアン・アラールさん(20)が、インターンシップ先の広島市のNPO法人で被爆者たちの証言をフランス語に翻訳した。核兵器を持つ母国の市民が被爆の実態に触れる機会をつくり「核兵器の悪影響を伝えたい」と意気込む。(山下美波)

 2人は平和活動に取り組む中区のNPO法人「ANT―Hiroshima」で4月から活動。大学で翻訳を学んでいる経験を生かし、被爆者や支援者の姿・言葉を記録して伝えるプロジェクト「ヒロシマ、顔」の英語版ホームページをフランス語に訳した。

 広島・長崎への原爆投下は歴史の一つとして授業で習う程度で、被爆証言に接するのは初めてだったという。被爆者の田中稔子さん(85)と原爆詩の朗読活動を続ける清水恵子さん(80)の紹介に取り組み、今夏に公開される見通しになった。

 大学が推奨するインターンシップ事業を活用して来日。平和への関心が強く、受け入れ団体の中からANTを選んだ。今月末に広島を離れ、6月下旬に帰国する予定。被爆10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんを題材にした絵本のフランス語版を持ち帰り、大学や図書館への寄贈を考えている。被爆証言の翻訳はフランスでも続けていく。

 ノエールさんは証言の翻訳を通じ「被爆後のつらい状況から前を向き、新しい生活を手に入れた姿に勇気づけられた」と話す。アラールさんは「フランス人の多くは以前の私のように核兵器について議論することもないし深く考えてない。被爆者の体験や核兵器の悪影響を家族や友人に伝えたい」と力を込めた。

(2024年5月18日朝刊掲載)

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