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連載・特集

問われる「成果」 広島サミットから1年 <3> つながる市民

核廃絶へ 世界と連帯

政策提言や議論の場 今年も

 「広島で1年前に議論した市民社会の声は、世界にしっかりと継承されている」。ひろしまNPOセンター(広島市中区)の松原裕樹事務局長(41)は15日、イタリアから配信された動画を見ながら実感した。広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開催に合わせ、市民による政策提言づくりの取り組みを支えた一人だ。

 動画は、世界中の市民団体が集う国際会議「C7サミット」の会場からの中継。同国で来月にあるG7サミットに合わせて開かれた。「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)共同代表で福山市出身の高橋悠太さん(23)=横浜市=が、広島の原爆被害をはじめ、核兵器廃絶を各国の非政府組織(NGO)や若者と議論したことを報告した。

 各国のNGOは協力し、今回もG7首脳に向けて市民目線での核兵器廃絶の政策提言を行う。世界の市民社会がG7首脳へ核廃絶について政策提言するのは、昨年に続いて2回目になる。

 昨年の提言づくりに携わった高橋さんは「広島やオンラインで世界の市民と議論する場を得たのは大きい」と話す。C7サミットでは、核兵器廃絶だけでなく気候変動や国際保健など多様な課題も議論する。

 高橋さんは昨年以降、環境や人道支援の分野で活動する団体との交流が広がり、「核兵器廃絶は私たちの活動にとっても重要」と言ってもらう機会が増えたという。「世界の市民の間で、被爆者の思いや核兵器の問題への関心が広がっている証し」と受け止める。

 被爆地での変化もある。G7サミットに合わせて昨春、広島県内外の市民団体が広島市中区の広島国際会議場などで「みんなの市民サミット」を開いた。市民で資金を集めて会場を運営。10カ国以上700人余りが熱い議論を交わした。議論を踏まえた提言は、政府に届けた。

 実行委員会の共同代表を務めたNPO法人ANT―Hiroshima(中区)の渡部朋子理事長(70)は「広島にいても、地球規模の課題を考えたり世界に声を発信したりできる。市民がそう思える場をつくり続ける」と力を込める。

 渡部さんは当時の仲間であるNPOセンターの松原さんらと協力し、市民サミットと同様の催しを今秋も開く。テーマは「平和とまちづくり」。企業にも輪を広げ、都市開発や環境など広い観点で議論する場にする。

 松原さんは「昨年の市民サミットを通じ、市民同士の新たなつながりも多く生まれた。そのうねりを育くみ続けたい」と意欲を燃やす。

 市民がつながり、社会の課題を考え、声を上げる-。そんな種が広島でもまかれ続けている。(久保友美恵)

(2024年5月21日朝刊掲載)

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